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国際輸送の停滞

作成者: NECL|2024.01.31

このたびの令和6年能登半島地震で被災された皆様に、心よりお見舞い申し上げますとともに、皆様の安全と被災地の一日も早い復興を心よりお祈り申し上げます。

フォーワディングニュース拡大版|国際輸送の停滞

今年最初のニュースレターは、通常のフォワーディングニュースを拡大して「国際輸送の停滞」についてお届けします。昨今、中東情勢の緊迫や異常気象から従来の国際輸送ルートが使えなくなり、我々の生活や企業のサプライチェーンに打撃を与え始めています。さらに、この国際物流の停滞は、世界経済を減速させるリスクになっていくと予想されています。

当ニュースレターでは、「スエズ運河(紅海)」、「パナマ運河」、「アイスランド火山噴火」(下図参照)を取り上げ、国際輸送への影響、対応策を解説していきます。
お時間がありましたらぜひお読みください。

図:スエズ運河、パナマ運河、アイスランドの状況

 
 
 
 

(1)スエズ運河(紅海)の情勢

スエズ運河は、エジプトのスエズ地峡にある運河で、地中海と紅海を南北に結ぶ要衝(交通、商業、軍事などで大切な地点)です。欧州〜アジアの海上輸送において、アフリカ大陸を回らない効率的な輸送ルートとなるため、無くてはならない場所になっています。
コンテナ船に限定すると、スエズ運河の通過貨物の世界海運貨物に対するシェアは17%となっています(2017年)。

①状況

イエメン沖で親イラン武装組織フーシ派が商船に対する攻撃を行っています。

<これまでの主な攻撃>
以下の攻撃のほか、昨年11月以降、フーシ派によるミサイル・ドローンによる攻撃が30回近く発生しております。

  • 12/14 MAERSK船 ”Maersk Gibraltar号”がミサイル攻撃を受ける。命中せず。
  • 12/15 MSC船 “PALATIUM III号”にドローンが衝突。火災が発生。
  • 12/15 HAPAG船にミサイルが発射。命中。
  • 12/18 ノルウェー船社のタンカーがドローンによる攻撃を受ける。

<攻撃への官民対応状況>

  • 12月中旬以降、主要なコンテナ船社は、紅海の航行を一時的に休止しました。現在、喜望峰を迂回する運航を行っています。
  • 一部の船社(MAERSKやCMA CGM)がアメリカ等を中心とした護衛船を伴いスエズ運河の通過を試みましたが、12月30日に“Maersk Hangzhou号”がフーシ派からの攻撃を受け、以降はMAERSKも当面の喜望峰迂回を決定しました。CMA船も同時期に攻撃を受けています。
  • 1月12日、13日にアメリカ・イギリスを中心とした軍がフーシ派の拠点(レーダー施設等)を攻撃しましたが、1月15日には逆にフーシ派が紅海を航行中のアメリカ貨物船を攻撃するなどし、状況は悪化しており収束時期は不透明となっています。

海運会社補足:
MAERSK(A.P.モラー・マースク、本社デンマーク)、MSC(メディテラニアン・シッピング・カンパニー、本社スイス)、HAPAG(ハパックロイド、本社ドイツ)、CMA CGM(本社フランス)

②国際輸送への影響
  • 喜望峰へ迂回する航路により、従来のスケジュールでの運用が困難となったため、余剰船や新造船を投入するなどBlank sailing(寄港地を飛ばす抜港や運航のキャンセル)とならないような対策が進められています。しかし、本船不足や空コンテナ回漕が間に合わない等の問題が懸念されていて、状況悪化の場合、本船動静への悪影響やスペース混雑、海上運賃高騰などが予想されます。
  • アジア-欧州航路への本船投入により、北米など他の主要航路についても、スケジュール調整やスペース混雑、運賃値上りなどの影響が出始めています。
  • 仮にスエズ航行が正常化となり通航可能になった場合でも、スケジュール回復にはその時点より数か月程はかかる見込みです。
③想定される代替え輸送方法
  • 分散化した小単位での出荷(本船動静不安定化への対策)
  • 航空輸送

(2)パナマ運河の情勢

パナマ運河は、パナマ共和国のパナマ地峡にある運河で、太平洋と大西洋を結ぶ要衝です。アメリカの東海岸と西海岸の海上輸送において、南アメリカ大陸を回らない効率的な輸送を実現する重要な役割を果たしています。また、アメリカ等から日本へ食料/飼料、石炭、液化天然ガスなどを運ぶ重要な輸送ルートの1つになっています。
コンテナ船に限定すると、パナマ運河の通過貨物の世界海運貨物に対するシェアは4%となっています(2017年)。

①状況

船舶を通過させる為の水をパナマ運河に供給しているガトゥン湖が、高温・少雨といったエルニーニョ現象の影響で、貯水量を大幅に低下させています(下図参照)。この水不足により船舶の通航制限が行われています。

図:エルニーニョ現象発生時の9~11月(北半球の秋)の天候の特徴

出所:気象庁「エルニーニョ現象発生時の世界の天候の特徴」(https://www.data.jma.go.jp/gmd/cpd/data/elnino/learning/tenkou/sekai1.html)を基に当社作成

②国際輸送への影響

以下の図は、パナマ運河の通航予約枠から見た通航制限の状況です。通常時の一日36隻から、3割程度の削減となっています。
2023年10月30日付のパナマ運河庁の通知文では、翌年1月には一日20隻、2月には一日18隻にするとされていましたが、12月はガトゥン湖の水位がある程度の回復状態にあり、1月から24隻に変更されました(1月16日から適用)。

図:通航予約枠から見る通航制限の状況(2023年12月現在) 【単位:隻/日】

時期 通常 2023年 2024年
平均 11月上旬 11月中旬~下旬 12月~ 1月16日~
通航数 36 25 24 22 24

出所:Panama Canal Authority(パナマ運河庁) 通知NO.A-48-2023およびA-54-2023より当社作成

また、パナマ運河を通航する為に待機している船舶は、2024年1月27日現在、65隻です(下図参照)。2023年11月14日時点では、予約済みが45隻、予約なしが75隻の合計120隻でしたので半分程度になっています。代替え輸送モード・ルートの選択、船舶への貨物積載量の削減*等の対応が進んでいるのかもしれません。
*通航する船舶の貨物積載量を減らすことで、運河での船の上げ下げで使用する水量を減らす。

図:通航待ちの船舶(2024年1月27日23時33分(現地時間)現在) 【単位:隻】

▼コンテナ船のサイズ 予約済み 予約なし
ネオパナマックス 11 2 13
パナマックス 42 10 52
合計 53 12 65

出所:Panama Canal Authority(パナマ運河庁) Vessels in queue for transitより当社作成
※ネオパナマックス、パナマックスはパナマ運河を通過できる船舶の最大サイズ。ちなみにスエズ運河を通過できる船舶の最大サイズはスエズマックと呼ばれる。

しかし、パナマは12月から乾季に入っており、この乾季は12~4月まで続きますので今後も警戒が必要と思われます。

③想定される代替え輸送方法
  • 分散化した小単位での出荷
  • 輸送モードの変更(陸送や鉄道輸送との組み合わせ、航空輸送)
  • 海上輸送ルートの変更(アフリカや南米大陸の最南端を迂回、スエズ運河(紅海)の経由*)
    *現状では紅海航行停止

 

 

(3)アイスランド火山噴火の情勢

最後に、アイスランドの火山噴火情勢と、火山による航空輸送への影響についてご紹介します。

①状況
2023年12月からアイスランド南西部のレイキャネスにある火山が噴火しました。住宅などが燃える被害がありましたが、幸い住民は避難し人的被害はないとのことです(2024年1月現在)。
<最近の噴火発生>
  ・2023年12月18日午後10時ごろ(現地時間)
  ・2024年 1月14日午前7時57分(現地時間)
 
②国際輸送への影響
今回の噴火では目立った国際輸送への影響は出ておりません(2024年1月現在)。

もし被害が拡大した場合、以下のような航空輸送への影響が懸念されます。
・日本発北廻りフライトのルート変更およびACL*による一部貨物未搭載
・南廻りフライトへのルート変更に伴うスペース狭隘化(きょうあいか:狭いこと)
・航空運賃の値上がり
・一部空港の離発着停止、閉鎖
 
*ACL(Allowable Cabin Load):航空機の客室および貨物室に搭載可能な最大重量。搭載優先順位は、旅客>旅客の荷物>郵便物>貨物となっており、航空機を安全に運航するために、搭載重量を調整する必要がある場合、貨物から搭載されなくなる。
 
③想定される代替え輸送方法
  • 日本発の西欧、北欧、東欧向けの航空貨物は南欧への航空便を使用して到着空港から陸送
  • 海上輸送(ただし、先述の通り、喜望峰廻りとなるとリードタイムは2カ月超、要する見込み)
④なぜ、火山噴火で航空輸送が欠航になるの?
今回お伝えしたアイスランドは世界有数の火山国です。これまで何度も大規模噴火を繰り返してきました。2010年にはエイヤフィヤトラヨークトル火山で大規模噴火が起こり、火山灰がヨーロッパの広範囲に広がったことで10万便以上が欠航する等、航空輸送に多大な影響を及ぼしました。
  
そもそも火山が噴火すると、航空輸送はなぜ欠航や迂回をしないといけないのでしょうか。
次から解説していきます。

火山が噴火すると、噴煙や火山灰により
・空路視界
・航空機
・空港インフラ
などに影響が出ます。以下の表で具体的な内容をご紹介します。
 

<噴煙や火山灰による航空輸送への影響>

空路視界 噴火に伴う噴煙で空路の視界が悪化
航空機 ・火山灰に含まれる硬い粒子でコックピットの窓が傷つき視界が悪化
・同様に航空機の機体が損傷
・火山灰はジェットエンジンの燃焼温度より融点の低いガラス質を多く含むため、エンジンに入り込むと熱で溶かされ付着し、最悪エンジンが停止
空港インフラ 飛行場に火山灰が堆積すると離着陸不可

出所:気象庁「火山灰の監視・予測」(https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/kouku/4_kazann/41_kazann/41_kazannbai.html)を基に当社作成

 

<影響を防止・軽減するための世界的な取り組み>

上記のような影響を防止・軽減するため、世界的な取り組みが行われています。

ICAO(International Civil Aviation Organization:国際航空民間機関)はWMO(World Meteorological Organization:世界気象機関)の協力の下、国際的な航空路火山灰の監視体制を構築しており、世界9か所でVAAC(Volcanic Ash Advisory Center:航空路火山灰情報センター)を指名し監視活動を続けています。
各VAACの役割は、火山噴火の監視と火山灰雲の実況・予測情報を各責任領域に提供することです。
日本は、1993年に「東京VAAC」として指名を受け、現在、東アジア・北西太平洋域及び北極圏の一部を担当しています。
以下の図の領域線は、世界9か所のVAAC担当領域を表わしています。

出所:気象庁「航空気象サービスへの貢献」(https://www.jma.go.jp/jma/kokusai/kokusai_aero.html)

 

(4)これからどうなる?

今後の中東情勢や気候変動について予測が難しいところではありますが、悪化した場合の想定されるシナリオを以下に図解しました。そうならないよう願うばかりですが、引き続き、動向を注視していきたいと思います。

図:今後のシナリオ


以上、ここまで国際輸送の停滞についてお届けしました。
当記事は、あくまで掲載時点での状況をご紹介するものです。最新情報は都度ご確認いただきたくお願い申し上げます。また、ご紹介した対応策は一例となり、状況・条件によっては対応できない場合もございますことご了承願います。

 

当社関連サービスのご紹介

   

当社のフォワーディング事業について紹介します。
お困りごと等ございましたらお気軽にお声がけ頂けましたら幸甚に存じます。

(1)航空輸送事業

NXグループとのシナジー創出で、高付加価値で競争力ある航空フォワーディングサービスをご提案します。
<サービス内容>
・利用運送事業者として航空機を運航する航空会社を利用して貨物運送を行います。
・国土交通省より認可を得た第2種貨物利用運送事業者として、トラックによる集配から海外での配送までドア・ツー・ドアで一貫した国際物流サービスをご提供します。
・国内拠点としては東京(成田、羽田)をはじめ関西、九州でお取り扱いしております。
<出荷先>
 世界69か国、127空港
<利用航空会社>
 53社(2022年実績)
<当社が保有する資格>
・IATA公認貨物代理店資格(1989年取得)
・第二種貨物利用運送事業(混載事業)(1993年取得)
・特定航空貨物利用運送事業者および特定航空運送代理店業者(航空保安)(2006年取得)

(2)海上輸送事業

 

ベースカーゴを活用した仕入力で、高付加価値で競争力ある海上フォワーディングサービスをご提案します。
<サービス内容>
・利用運送事業者として船会社を利用して貨物運送を行います。
・国土交通省より認可を得た第2種貨物利用運送事業者として、トラックによる集配から海外での配送までドア・ツー・ドアで一貫した国際物流サービスをご提供します。
・国内拠点としては京浜港、阪神港をはじめその他地方港でお取り扱いしております。
<出荷先>
 世界39か国、124港
<利用船会社>
 71社
<当社が保有する資格>
・貨物利用運送事業外航海運(1991年 第一種取得、2003年 第二種取得)
 ※NVOCC(Non-Vessel-Operating Common Carrier ):非船舶運航業者
・届出荷送人(2016年取得)
 ※SOLAS条約、船舶安全法に基づき自ら国際海上コンテナの総重量を確定させる資格
・FMC(Federal Maritime COMMISSION) Registered NVOCC(2021年登録)

 

 

引き続き、国内外のトピックスを掘り起こし皆様にお届け出来ればと思いますので、次回もお読みいただければ嬉しく思います。

  

 (執筆は2024/1/31時点で、情報は変わる可能性があります。)