このたびの令和6年能登半島地震で被災された皆様に、心よりお見舞い申し上げますとともに、皆様の安全と被災地の一日も早い復興を心よりお祈り申し上げます。
今年最初のニュースレターは、通常のフォワーディングニュースを拡大して「国際輸送の停滞」についてお届けします。昨今、中東情勢の緊迫や異常気象から従来の国際輸送ルートが使えなくなり、我々の生活や企業のサプライチェーンに打撃を与え始めています。さらに、この国際物流の停滞は、世界経済を減速させるリスクになっていくと予想されています。
当ニュースレターでは、「スエズ運河(紅海)」、「パナマ運河」、「アイスランド火山噴火」(下図参照)を取り上げ、国際輸送への影響、対応策を解説していきます。
お時間がありましたらぜひお読みください。
図:スエズ運河、パナマ運河、アイスランドの状況
スエズ運河は、エジプトのスエズ地峡にある運河で、地中海と紅海を南北に結ぶ要衝(交通、商業、軍事などで大切な地点)です。欧州〜アジアの海上輸送において、アフリカ大陸を回らない効率的な輸送ルートとなるため、無くてはならない場所になっています。
コンテナ船に限定すると、スエズ運河の通過貨物の世界海運貨物に対するシェアは17%となっています(2017年)。
イエメン沖で親イラン武装組織フーシ派が商船に対する攻撃を行っています。
<これまでの主な攻撃>
以下の攻撃のほか、昨年11月以降、フーシ派によるミサイル・ドローンによる攻撃が30回近く発生しております。
<攻撃への官民対応状況>
海運会社補足:
MAERSK(A.P.モラー・マースク、本社デンマーク)、MSC(メディテラニアン・シッピング・カンパニー、本社スイス)、HAPAG(ハパックロイド、本社ドイツ)、CMA CGM(本社フランス)
パナマ運河は、パナマ共和国のパナマ地峡にある運河で、太平洋と大西洋を結ぶ要衝です。アメリカの東海岸と西海岸の海上輸送において、南アメリカ大陸を回らない効率的な輸送を実現する重要な役割を果たしています。また、アメリカ等から日本へ食料/飼料、石炭、液化天然ガスなどを運ぶ重要な輸送ルートの1つになっています。
コンテナ船に限定すると、パナマ運河の通過貨物の世界海運貨物に対するシェアは4%となっています(2017年)。
船舶を通過させる為の水をパナマ運河に供給しているガトゥン湖が、高温・少雨といったエルニーニョ現象の影響で、貯水量を大幅に低下させています(下図参照)。この水不足により船舶の通航制限が行われています。
図:エルニーニョ現象発生時の9~11月(北半球の秋)の天候の特徴
出所:気象庁「エルニーニョ現象発生時の世界の天候の特徴」(https://www.data.jma.go.jp/gmd/cpd/data/elnino/learning/tenkou/sekai1.html)を基に当社作成
以下の図は、パナマ運河の通航予約枠から見た通航制限の状況です。通常時の一日36隻から、3割程度の削減となっています。
2023年10月30日付のパナマ運河庁の通知文では、翌年1月には一日20隻、2月には一日18隻にするとされていましたが、12月はガトゥン湖の水位がある程度の回復状態にあり、1月から24隻に変更されました(1月16日から適用)。
図:通航予約枠から見る通航制限の状況(2023年12月現在) 【単位:隻/日】
時期 | 通常 | 2023年 | 2024年 | ||
平均 | 11月上旬 | 11月中旬~下旬 | 12月~ | 1月16日~ | |
通航数 | 36 | 25 | 24 | 22 | 24 |
出所:Panama Canal Authority(パナマ運河庁) 通知NO.A-48-2023およびA-54-2023より当社作成
また、パナマ運河を通航する為に待機している船舶は、2024年1月27日現在、65隻です(下図参照)。2023年11月14日時点では、予約済みが45隻、予約なしが75隻の合計120隻でしたので半分程度になっています。代替え輸送モード・ルートの選択、船舶への貨物積載量の削減*等の対応が進んでいるのかもしれません。
*通航する船舶の貨物積載量を減らすことで、運河での船の上げ下げで使用する水量を減らす。
図:通航待ちの船舶(2024年1月27日23時33分(現地時間)現在) 【単位:隻】
▼コンテナ船のサイズ | 予約済み | 予約なし | 計 |
ネオパナマックス | 11 | 2 | 13 |
パナマックス | 42 | 10 | 52 |
合計 | 53 | 12 | 65 |
出所:Panama Canal Authority(パナマ運河庁) Vessels in queue for transitより当社作成
※ネオパナマックス、パナマックスはパナマ運河を通過できる船舶の最大サイズ。ちなみにスエズ運河を通過できる船舶の最大サイズはスエズマックと呼ばれる。
しかし、パナマは12月から乾季に入っており、この乾季は12~4月まで続きますので今後も警戒が必要と思われます。
最後に、アイスランドの火山噴火情勢と、火山による航空輸送への影響についてご紹介します。
<噴煙や火山灰による航空輸送への影響>
空路視界 | 噴火に伴う噴煙で空路の視界が悪化 |
航空機 | ・火山灰に含まれる硬い粒子でコックピットの窓が傷つき視界が悪化 ・同様に航空機の機体が損傷 ・火山灰はジェットエンジンの燃焼温度より融点の低いガラス質を多く含むため、エンジンに入り込むと熱で溶かされ付着し、最悪エンジンが停止 |
空港インフラ | 飛行場に火山灰が堆積すると離着陸不可 |
出所:気象庁「火山灰の監視・予測」(https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/kouku/4_kazann/41_kazann/41_kazannbai.html)を基に当社作成
<影響を防止・軽減するための世界的な取り組み>
上記のような影響を防止・軽減するため、世界的な取り組みが行われています。
ICAO(International Civil Aviation Organization:国際航空民間機関)はWMO(World Meteorological Organization:世界気象機関)の協力の下、国際的な航空路火山灰の監視体制を構築しており、世界9か所でVAAC(Volcanic Ash Advisory Center:航空路火山灰情報センター)を指名し監視活動を続けています。
各VAACの役割は、火山噴火の監視と火山灰雲の実況・予測情報を各責任領域に提供することです。
日本は、1993年に「東京VAAC」として指名を受け、現在、東アジア・北西太平洋域及び北極圏の一部を担当しています。
以下の図の領域線は、世界9か所のVAAC担当領域を表わしています。
出所:気象庁「航空気象サービスへの貢献」(https://www.jma.go.jp/jma/kokusai/kokusai_aero.html)
今後の中東情勢や気候変動について予測が難しいところではありますが、悪化した場合の想定されるシナリオを以下に図解しました。そうならないよう願うばかりですが、引き続き、動向を注視していきたいと思います。
図:今後のシナリオ
以上、ここまで国際輸送の停滞についてお届けしました。
当記事は、あくまで掲載時点での状況をご紹介するものです。最新情報は都度ご確認いただきたくお願い申し上げます。また、ご紹介した対応策は一例となり、状況・条件によっては対応できない場合もございますことご了承願います。
当社のフォワーディング事業について紹介します。
お困りごと等ございましたらお気軽にお声がけ頂けましたら幸甚に存じます。
NXグループとのシナジー創出で、高付加価値で競争力ある航空フォワーディングサービスをご提案します。
<サービス内容>
・利用運送事業者として航空機を運航する航空会社を利用して貨物運送を行います。
・国土交通省より認可を得た第2種貨物利用運送事業者として、トラックによる集配から海外での配送までドア・ツー・ドアで一貫した国際物流サービスをご提供します。
・国内拠点としては東京(成田、羽田)をはじめ関西、九州でお取り扱いしております。
<出荷先>
世界69か国、127空港
<利用航空会社>
53社(2022年実績)
<当社が保有する資格>
・IATA公認貨物代理店資格(1989年取得)
・第二種貨物利用運送事業(混載事業)(1993年取得)
・特定航空貨物利用運送事業者および特定航空運送代理店業者(航空保安)(2006年取得)
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<サービス内容>
・利用運送事業者として船会社を利用して貨物運送を行います。
・国土交通省より認可を得た第2種貨物利用運送事業者として、トラックによる集配から海外での配送までドア・ツー・ドアで一貫した国際物流サービスをご提供します。
・国内拠点としては京浜港、阪神港をはじめその他地方港でお取り扱いしております。
<出荷先>
世界39か国、124港
<利用船会社>
71社
<当社が保有する資格>
・貨物利用運送事業外航海運(1991年 第一種取得、2003年 第二種取得)
※NVOCC(Non-Vessel-Operating Common Carrier ):非船舶運航業者
・届出荷送人(2016年取得)
※SOLAS条約、船舶安全法に基づき自ら国際海上コンテナの総重量を確定させる資格
・FMC(Federal Maritime COMMISSION) Registered NVOCC(2021年登録)