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日本港湾の取り組みと進む地方港の活用

作成者: NECL|2024.07.31
 
 

日本港湾の取り組みと進む地方港の活用


資源やエネルギー、穀物など輸入や企業が生産した製品の輸出の際などに利用される港湾は、国民生活や経済活動において重要な社会インフラの一部と言えます。
今回は、日本港湾の取り組みと注目が高まっている地方港の取り組みや活用メリットをご紹介します。
どうぞ最後までお付き合い頂けますようお願い致します。


数値で見る日本港湾の概要


日本の港湾の数は、国土交通省の統計情報によると、約993(2024年4月時点)とされています。

出所:国土交通省 統計情報(https://www.mlit.go.jp/statistics/details/port_list.html

港湾の役割は重要で、日本の貿易量の約99.6%を海上輸送が担っています。日本がどのような国と貿易し、どのような品目が海上輸送で取り扱われているのか、2021年時点の国際コンテナ貨物輸送の取引実績を以下でご紹介します。

輸出額では、1位中国、2位アメリカ、3位台湾で全輸出額の約5割となります。アジア、欧州、中南米の国も上位にはありますが、いずれも全輸出額の数パーセント程度となります。
また、コンテナ貨物の主な輸出品目は、各方面とも産業機械、自動車部品、電気機械が上位に位置しています。

〈2011年と2021年を比較したコンテナ貨物の輸出相手国(金額ベース) 〉

〈2021年日本のコンテナ貨物輸出主要品目(金額べ―ス)〉

コンテナ貨物の輸出相手国とコンテナ貨物輸出主要品目の出所:国土交通省 「第1回 「新しい国際コンテナ戦略港湾政策の進め方検討委員会」の概要について」(https://www.mlit.go.jp/kowan/kowan_tk2_000067.html)

輸入額では、1位の中国が突出しており全輸入額の42%を占めます。アメリカ、アジア、欧州や中南米の国も上位にはありますが、いずれも全輸入額の数パーセント程度となります。
また、コンテナ貨物の主な輸入品目は、多岐にわたり、アジア地域は、電気機械、衣類・履物、産業機械などが主要品目ですが、他地域は食品が上位となります。

〈2011年と2021年を比較したコンテナ貨物の輸入相手国(金額ベース)〉

〈2021年日本のコンテナ貨物輸入主要品目(金額べ―ス)〉

コンテナ貨物の輸入相手国とコンテナ貨物輸入主要品目の出所:国土交通省 「第1回 「新しい国際コンテナ戦略港湾政策の進め方検討委員会」の概要について」(https://www.mlit.go.jp/kowan/kowan_tk2_000067.html)

 

日本港湾を取り巻く状況変化


コンテナ貨物については、日本の港湾はアジアの上海港や釜山港などの主要港と比較し相対的に貨物量が少ないこと等により、船舶の大型化が進む、北米・欧州等と日本とを結ぶ国際基幹航路の寄港数が減少傾向にあります。また、新型コロナの影響による世界的な物流混乱を受け、運航スケジュールの正常化に向けた更なる寄港地の絞り込みが行われ国際基幹航路の日本への寄港数は減少しました。

国際基幹航路が日本港湾へ寄港することは、日本立地企業のリードタイム短縮やキャッシュフローへの影響、サプライチェーンの強靭化に繋がる為、国として様々な政策を行っています。
激変する国際物流情勢に対応するため、従来から進められていた「国際コンテナ戦略港湾政策*」をフォローアップし今後の進め方について検討を行うため、国土交通省は、2023年2月に「新しい国際コンテナ戦略港湾政策の進め方検討委員会」を設置しました。本委員会は、2024年度から概ね5年間程度で取り組むべき施策の方向性等についての検討を行い、その内容を2024年2月に「最終とりまとめ」として公表しています。

国際コンテナ戦略港湾政策*…国際コンテナ戦略港湾政策の概要について、国土交通省の以下ページよりご覧いただけます。
https://www.mlit.go.jp/kowan/kowan_tk2_000002.html
また、「国際コンテナ戦略港湾政策のこれまでの経緯」について、国土交通省の資料よりご覧いただけます
https://www.mlit.go.jp/kowan/content/001723866.pdf

 

国際コンテナ戦略港湾政策における主な施策の方向性


国際コンテナ戦略港湾政策では、北米・欧州航路をはじめ、中南米・アフリカ等多方面・多頻度の直航サービスを充実させることで日本のサプライチェーンの強靭化を図り、グローバルに展開する日本の立地企業のサプライチェーンマネジメントに貢献することを政策目標としています。


新しい国際コンテナ戦略港湾政策の進め方検討委員会の最終とりまとめの中では、主な施策となる「集貨」「創貨」「競争力強化」の三本柱の方向性が示されましたので、簡単に内容をご紹介します。

出所:国土交通省 「新しい国際コンテナ戦略港湾政策の進め方検討委員会 最終とりまとめ」を加工して作成(https://www.mlit.go.jp/kowan/kowan_fr2_000054.html)

日本の港湾が国際競争力を強化させていくには、主要港*(国際コンテナ戦略港湾など)だけではなく地方港*も重要な役割を担います。

主要港*…本内容では、京浜港(国際コンテナ戦略港湾)、阪神港(国際コンテナ戦略港湾)、名古屋港とする
地方港*…本内容では、上記の主要港以外の港湾とする

地方港と比較し主要港を利用するメリットは、一般的には本船スケジュールの選択肢が多く利便性が良い、地方港と比較しスケールメリットと競争原理が働くことから、運賃コストが抑えられるなどが考えられます。一方、地方港を国際輸送で利用する場合、地方港から海外の港への直航航路やトランシップ、もしくは地方港から主要港へのフィーダー航路の利用となります。以下では地方港の取り組みと地方港を利用した場合のメリットをいくつかご紹介します。

地方港の取り組み(国際コンテナ戦略港湾との連携強化)


国際コンテナ戦略港湾政策では、地方港と国際コンテナ戦略港湾を結ぶ国際フィーダー航路を拡大する取り組みが行われてきました。地方港からトランシップで海外の港に流れていた貨物を国際コンテナ戦略港湾である京浜港や阪神港に集貨するというものです。

阪神港は2014年度から制度の支援が開始、京浜港は2016年度から制度の支援が開始されました。
国際フィーダー便数と国際フィーダー貨物量の推移を以下に示しました。
京浜港は需給逼迫の影響を受け、フィーダー貨物量の減少がみられるものの、京浜港のフィーダー便数、阪神港のフィーダー便数とフィーダー貨物量は支援開始前と比較し、増加傾向となっています。――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【京浜港】 ※2016年度から国費による支援開始
・国際フィーダー便数:約2割増(2016年3月→2022年11月)
・国際フィーダー貨物量:約3万TEU減(2015年→2021年)
【阪神港】 ※2014年度から国費による支援開始
・国際フィーダー便数:約4割増(2014年4月→2022年11月)
・国際フィーダー貨物量:約6万TEU増(2013年→2021年)
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出所:国土交通省 「第1回 「新しい国際コンテナ戦略港湾政策の進め方検討委員会」の概要について」(https://www.mlit.go.jp/kowan/kowan_tk2_000067.html)

国際フィーダー航路を拡大するという取り組みの中には、日本海側における国際フィーダー航路の開設があります。釜山港等でのトランシップからの転換が難しいと考えられていた日本海側の港湾(敦賀港、舞鶴港、境港、秋田港、新潟港)と阪神港を結ぶ航路が2022年に開設されました。

●国際フィーダー航路による海外トランシップからの神戸港利用への転換

航路:神戸港 ~ 敦賀港 ~ 舞鶴港 ~ 境港              航路:神戸港 ~ 秋田港 ~ 新潟港 (北九州港(ひびき)経由)

出所:国土交通省 「第1回 「新しい国際コンテナ戦略港湾政策の進め方検討委員会」の概要について」(https://www.mlit.go.jp/kowan/kowan_tk2_000067.html)

国際コンテナ戦略港湾に貨物を集めることが目的の1つですが、地方港によっては外航航路に直結するフィーダー航路が開設されることは、該当する港湾に立地する企業にとって、輸送ルートの選択肢を増やすことが可能となります。

地方港の活用メリット


1.2024年問題への対策
2024年問題については、海上輸送も無関係ではありません。海上コンテナを港まで輸送する(もしくは、港から海上コンテナを指定納品先まで輸送する)ドレージ輸送には、トラックドライバーが必要となります。主要港から近隣の国際輸送が可能な地方港へ切り替え、ドレージ輸送の距離を短くすることで、車両の確保難の影響を減らすことができます。
また、東京港などは、改善への取り組みはあるものの、特に繁忙期におけるコンテナターミナルの待機時間の長さは課題の1つとされています。近隣の国際輸送が可能な地方港へ切り替えることで、東京港などでは待機時間が数時間単位を要したものが、数十分単位になるなどのメリットが考えられます。

2.トータルコスト
主要港と比較した場合、運賃については貨物量を集める主要港が安価となる可能性はありますが、ドレージの距離が短くなる場合は、トータルコストで考えた場合、コストダウンに繋がる可能性があります。また、コンテナ貨物の助成金制度(一定の条件あり)を導入している港湾もあり、助成金を利用した場合、更なるコストダウンに繋がります。

3.CO2排出量の削減(サプライチェーン排出量削減)
企業にとってサプライチェーン排出量におけるScope3を抑えることは重要な取り組みと言えます。
製品が出荷される場所や納品される場所の集配地域において、主要港より地方港が近距離にある場合はトラック輸送していた距離を海上輸送に切り替えることが出来るのでCO2排出量の削減に効果が期待できます。

地方港は取扱い荷量の拡大に取り組んでおり、今後の展望に期待ができます。
当社では、主要港と地方港の利用について、トータルコスト、リードタイムなど観点からお客様のご要望に沿ったバランスのとれた提案が可能ですので、お気軽にご相談ください。

(執筆は2024/07/31時点で、情報は変わる可能性があります)。

ここからは、当社の関連物流サービスを紹介します。

当社関連サービスのご紹介

          

常陸那珂港活用による海上輸出入サービス


物流2024年問題への対策とSDGsへの取り組みとして、地方港を活用したサービスを提案しています。
今回は常陸那珂港活用による海上輸出入サービスをご紹介します。以下より、サービスページへリンクできます。



リターナブルコンテナ導入による輸送コスト低減事例


今回は、海外に自社工場で生産した製品を日本国内の自動車組み立てメーカーへ納品されていたお客様の事例です。

お客様は3つの課題をお持ちでした。

 

3つの課題に対し、当社は包装資材(専用リターナブルコンテナ)をキーとした輸送スキーム見直しの提案を行いました。

 

導入内容や導入効果については、以下リンクページに詳細内容がございます。ぜひ、ご覧ください。

 

 自動車部品メーカー様
 リターナブルコンテナ導入による輸送コスト低減事例

 


このほか、様々なソリューション・事例がございますので、ご興味がありましたらお気軽に当社営業、または当WEBサイトの「お問合せ」よりご連絡いただけましたら幸いです。