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物流トピックス|中東不安による運賃上昇と5月末の法対応〆切

作成者: NECL|2026.04.30

【物流TOPIX】運賃上昇と5月末の法対応〆切
-今、荷主が知るべき3つの物流リスク-

 

現在、中東情勢の緊迫化により、物流コストへの圧力が急速に強まっています。
最新の企業向けサービス価格指数では、外航貨物輸送が前年比で大幅に上昇。さらに影響は運賃だけでなく、ナフサ供給不安に伴う「梱包資材の納期遅延や値上げ」という形で物流現場にも波及し始めています。
本号では、中東情勢に関する日本政府の対応策や今後の見通しに加え、5月末に締め切りを迎える改正物流効率化法の「特定事業者の届出」に関する注意点を3つの物流リスクとしてまとめています。リスクヘッジ検討の一助として、ぜひお役立てください。

 

【運賃動向】 中東情勢緊迫化で海・空運賃が上昇。今後の見通しは?


◆日本の動向

日本銀行が4月24日に発表した企業向けサービス価格指数によると、2026年3月の海上/航空貨物輸送運賃は上昇しました(図1ご参照)。
前年同月比で航空が8.8/海上が26.2ポイント上昇しました。外航貨物輸送(外航タンカー除く)は、前年同月比で37.1ポイントと大幅に上昇しました。ホルムズ海峡の実質上の封鎖による海上貨物スペース不足や、原油高騰による燃料コスト増が影響しています。

[図1]海上貨物輸送・航空貨物輸送価格指数


出所:日本銀行 企業向けサービス価格指数データ
https://www.stat-search.boj.or.jp/ssi/cgi-bin/famecgi2?cgi=$nme_a000&lstSelection=PR02)より当社作成(指数は最高値を使用)
※「企業向けサービス価格指数」とは、企業間で取引されるサービスに関する価格の変動を日銀が測定したもの。企業間での個々の商取引における値決めの参考指標としても利用されている。


◆世界の動向

英国調査会社ドゥルーリー(Drewry)が4月23日に発表した世界のコンテナ指数(WCI:World Container Index)では、海上運賃はアジア・ヨーロッパルート(※1)の運賃低下に牽引され、2週連続で下落しました。燃料費の上昇やホルムズ海峡での混乱による戦争割増料(War Risk Surcharge)があるものの、運送事業者は季節的需要の弱さの中で運賃値上げに苦労しているとのことです。一方、大西洋横断ルート(※2)では、PSS(Peak Season Surcharge:繁忙期の割増料金)導入により大幅に上昇したとのことです。
今後、中東情勢による燃料コスト上昇が継続する中、需要の低迷に対しては抜港(Blank sailing)による船社の需給調整が行われる等、海上運賃に上昇圧力がかかる見通しです。
(※1)代表的なルート:上海とロッテルダム、ジェノヴァ、ロサンゼルス、ニューヨーク間
(※2)代表的なルート:ニューヨークとロッテルダム間

運賃の安定のためには、ホルムズ海峡の航行リスクの低下、戦争割増の保険料金の解消などがポイントとなります。すぐに解消される見通しはたっていないため、引き続き、米国・イスラエルとイランの軍事衝突の動向が注目されます。


【資材リスク】 意外な盲点?ナフサ供給不安による「包装資材」への影響


様々な石油化学製品の原料となる「ナフサ」の供給が不安視されています。
ナフサは、プラスチック、ゴム、電子部品、塗料・接着剤といった石油化学製品の原料で、自動車、医療、建設、電機・電子、印刷など多岐にわたる業界を支えている重要な物資です(図2ご参照)。

ナフサは、原油精製の副産物であるため、原油の供給動向に大きく左右されます。日本の原油は中東依存度が約9割と非常に高く、さらに、ナフサ調達先も約4割が中東経由のため供給不安が浮上しています。

[図2]ナフサを原料とするサプライチェーン


出所:中東情勢に関する関係閣僚会議(第3回) 経済産業省資料https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/chyutoujyousei/dai3/gijisidai.html)を加工して当社作成


◆物流現場での影響

物流現場においては、ストレッチフィルムや梱包用ポリエチレン袋、PPバンド等で影響が出ています。図3は川中製品(ナフサから作られる中間段階の化学製品)を原料とする物流包装資材を示したものです。日々の物流現場作業に欠かせない多くの資材がこのようにナフサ由来となっています。

[図3]川中石油化学製品から出来る物流包装資材




3月上旬ころから、物流包装資材メーカーならびに輸入販売各社は、納期調整・遅延、受注制限(受注量制限や新規取引停止)、価格改定(値上げ)の情報発信を行っています。買いだめなどで需給バランスを悪化させないため、既存取引先に対し通常の使用量を上回る発注を受け付けないなどの通知も行っています。


◆日本政府の取り組み

日本政府は、まずは、ホルムズ海峡の安全回復の為、事態の解決に向け国際連携を推進しています。また、原油の代替調達に向けて産油国への働きかけを行っています。3月24日から「中東情勢に関する関係閣僚会議」を開始し、中東情勢をめぐる状況やエネルギー等の確保策について協議を続けています。

ナフサおよびナフサ由来の石油化学製品の需給について、4月10日の同会議で、調達済みナフサ2ヶ月分と川中製品の2カ月分で、国内需要4ヶ月分の在庫を確保していると説明しています。

今後の調達については、①ナフサの国内精製の継続、②中東以外からの輸入を2倍に加速、③川中製品在庫2カ月分の活用期間延伸、④国内生産7割の川中製品について世界から新たな調達強化(例:ポリエチレンの輸出国は米国がダントツ首位。カナダ、シンガポールが続く)といった取り組みを行っていくとしています。

参考:内閣府「中東情勢に関する対応」(https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/chyutoujyousei/index.html


【法改正対応】 期限は5月末!「特定荷主」の届出基準と推計方法のヒント


2025年4月
、「物資の流通の効率化に関する法律(以下、改正物流効率化法)」による全ての同法対象事業者(※3)に対して、運転者の荷待ち時間・荷役等時間の短縮及び運転者一人当たりの一回の運送ごとの貨物の重量の増加に係る措置の努力義務が施行されました。
(※3)改正物流効率化法の対象事業者:荷主(発荷主・着荷主)、連鎖化事業者(フランチャイズチェーンの「本部」)、貨物自動車運送事業者等、貨物自動車関連事業者(倉庫、港湾運送、航空運送、鉄道)

2026年4月、第二段階として一定規模以上の荷主、連鎖化事業者、貨物自動車運送事業者、倉庫業者を特定事業者とし、中長期計画や定期報告作成等の義務が施行されました。

現在、特定事業者の届け出期間となっています。荷主は前年度に運送事業者に運送を行わせた貨物の合計重量もしくは受け取った/引き渡した等の貨物の合計重量、連鎖化事業者は前年度に受け取った貨物等の合計重量、貨物自動車運送事業者等は年度末に保有する事業用自動車の台数、倉庫業者は入庫された貨物の年度の合計重量を算出し、指定基準(図4)以上となっている場合に、今年の5月末日までに自ら届け出る必要があります。届け出は原則オンラインとなっており、主たる事業の所管省庁宛に申請を行います。

実績が指定基準以上であるにもかかわらず届出をしなかったとき等は、50万円以下の罰金が科せられます。

[図4]特定事業者の指定基準


特定荷主及び特定連鎖化事業者:取扱貨物の重量が9万トン以上
特定貨物自動車運送事業者等:保有車両台数が150台以上
特定倉庫業者:貨物の保管量が70万トン以上


届け出の締め切りが迫る中、各事業者とも条件を精査中のことと思います。たとえば、荷主において指定基準の貨物重量を調べる場合、実測のほか推計も認められ、軽微な貨物の除外規定もありますので、まずは対応内容を確認されることをおすすめいたします。経済産業省等では事業者向け説明会を無料で行っていますのでそうした会に参加されたり、関係WEBサイトのFAQ(よくある質問)をご覧になったりすることも理解の一助になると思います。

参考:経済産業省「物流効率化法について」
https://www.meti.go.jp/policy/economy/distribution/butsuryu-kouritsuka.html
   国土交通省「物流効率化法について」
https://www.mlit.go.jp/seisakutokatsu/freight/seisakutokatsu_freight_mn1_000034.html


ちなみに、公益社団法人の日本ロジスティクス システム協会では、荷主を対象に、取扱い貨物重量を業種と売上高から推計する方法を公開しています。具体的な調査前の検討材料としてご参考にされるとよいかもしれません。

参考:日本ロジスティクスシステム協会「荷主企業の売上高から物流量を推計する方法」
https://www1.logistics.or.jp/data/freight-calc/


今後のスケジュールは図5のようになっています。

特定事業者として所管省庁から正式に指定を受けた後、特定荷主及び特定連鎖化事業者の場合は、すみやかに「物流統括管理者」の選任・届出が必要となります。これは遅くとも中長期計画提出時までに行う必要があります。物流統括管理者を選任しない場合、100万円以下の罰金が科せられます。また、選任の届出を怠った場合は、20万円以下の過料に処せられますので注意が必要です。

[図5]改正物流効率化法に関するスケジュール


出所:国土交通省・経済産業省・農林水産省「改正物効法に基づく特定事業者の対応について」
https://www.meti.go.jp/policy/economy/distribution/250917-18_material.pdf




以上、ここまで物流最新トピックスをお届けしました。お読みいただきありがとうございました。
今後も皆様のビジネスのお役に立てるような物流動向に関する情報を随時お届けしてまいります。

※なお、当記事でご紹介する情報、データは記事作成時点(2026年4月24日)で公表されているもので速報値も含みます。公表後に修正される可能性がございますので、ご利用の際は情報元にアクセスいただきご確認頂くことをおすすめいたします。