このたびの令和8年熊本地震により被災された皆さまに、心よりお見舞い申し上げます。皆さまの安全と被災地の一日も早い復興を心よりお祈り申し上げます。
タイは、ASEANの中心に位置する地理的優位性を有し、自動車産業などを中心に産業集積が進んでいます。一方で、少子高齢化による労働力減少や高度人材の不足、賃金上昇などの課題も抱え経済成長はゆるやかになっています。タイは、産業高度化や国際競争力強化を図るため、国として投資奨励制度の拡充、工業団地やインフラの整備が進められています。今回は、タイのビジネス環境を政策・経済や物流事情の面から取り上げ解説します。お時間ありましたら、ぜひお読みください。
日タイ両国は600年にわたる交流の歴史を持ち、伝統的に友好関係を維持しており、2027年は日本とタイの修好140周年を迎えます。インドシナ半島の中央に位置し、カンボジア、ラオス、ミャンマー、マレーシアの4ヵ国と国境に面しています。
図1:タイ基礎情報
| 国名 | タイ王国 Kingdom of Thailand |
| 国土面積 | 約51万平方キロメートル※日本の国土の約1.4倍(日本:37万7,976平方キロメートル(2024年)) |
| 人口 | 6,605万人(2025年) |
| 首都 | バンコク |
| 民族 | 大多数がタイ族。その他 華人、マレー族等。 |
| 言語 | タイ語 |
| 宗教 | 仏教 94%、イスラム教 5% |
| 議会 | 下院500議席(公選)、上院200議席(小選挙区比例代表並立制) |
| 主要産業 | 製造業が主要産業となっており、タイGDPの約30%を稼いでいる。一方、農業については、就業者数ではタイ就業者数全体の約30%を占める産業となっているが、GDPのシェアでは10%未満にとどまる。また、観光業も主要産業の1つである。 |
出所:外務省「タイ王国(Kingdom of Thailand)基礎データ」
(https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/thailand/data.html)より当社作成
タイは、長期的な開発目標を定めた国家戦略として、「National Strategy 2018-2037(以下、20カ年国家戦略)を掲げており、タイで初の長期的な国家戦略となります。「中所得国の罠」からの脱却、また少子高齢化による労働力の減少、ASEAN諸国との投資誘致競争などの課題に対応するため、20カ年国家戦略は制定されました。
この国家戦略のビジョンは、安全、繁栄、持続可能な先進国となることが掲げられています。
「20カ年国家戦略」に基づいたビジョンの1つとして「タイランド4.0(Thailand 4.0)」があります。これまでの段階的な経済発展を「タイランド 1.0(農業)」、「タイランド 2.0(軽工業)」、「タイランド 3.0(重工業)」と区分し、「タイランド4.0」では12分野を重点産業として選定しました。先端技術やイノベーションを導入することで産業構造の高度化を図り、持続的成長を実現するのが狙いです。
12分野の重点産業は以下となります。
※当初は10産業でしたが、のちに教育・人財開発と防衛が追加されました
① 次世代自動車
② スマートエレクトロニクス
③ 農業・バイオテクノロジー
④ 医療・健康ツーリズム
⑤ 未来食品
⑥ 航空・ロジスティクス
⑦ バイオ燃料・バイオ科学
⑧ ロボット工学
⑨ 医療ハブ
⑩ デジタル産業
⑪ 教育・人材開発
⑫ 防衛
「タイランド4.0」 を実現するための中核的プロジェクトとして、「東部経済回廊(Eastern Economic Corridor: EEC)」開発を打ち出しています。東部3県のチャチュンサオ、チョンブリ、ラヨン(図2)の特定地域をEECエリアとして指定し、集中的なインフラ整備等を行い外国企業の誘致を進めています。大型インフラ開発事業としては、ウタパオ、スワンナプーム、ドンムアンの3つの主要国際空港を結ぶ空港高速鉄道の開発やウタパオ国際空港やレムチャバン港の拡張などがあります。
図2:東部経済回廊(EEC)
恩典内容は、税制上の恩典と税制以外の恩典があります。
また、恩典を付与する基準を、事業内容に基づいて分類し段階的に付与しています。
まずは、恩典の内容について説明します。
税制上の恩典/税制以外の恩典
税制上の恩典
・機械輸入税の免除・減税
・原材料および必要資材輸入税の減税
・研究開発用の物品の輸入税の免除
・法人所得税および配当金にかかる税金の免除
・法人所得税の50%減税
・輸送費、電気代および水道代の2倍までを控除
・インフラの設置、建設費の25%を通常の減価償却に加えて控除
・輸出向け製造用の原材料および必要資材の輸入税の免除
税制以外の恩典
・投資機会調査のための外国人入国許可
・被奨励プロジェクトでの外国人技術者、専門家の入国、就労許可
・タイ国外への外貨送金の許可
・土地の所有権の許可
恩典は事業内容に基づき段階的に付与されており、以下は基礎的恩典の主な内容です。
図3:恩典付与の基準(業種のグループ)
※業種グループについて
・A1+グループ:教育機関や研究機関との共有による高度技術とイノベーションを活用する上流産業および対象技術の開発(バイオテクノロジー、ナノテクノロジー、先端材料テクノロジー)
・A1グループ:国の競争力を向上させる、デザインや研究開発(R&D)に重点を置いたナレッジベースの産業
・A2グループ:国の発展に貢献するインフラ事業、タイ国内の投資が少ないか、または、まだ投資が行われておらず、付加価値の創出に高度技術を使用する事業
・A3グループ:既にタイ国内に生産拠点が少数あるものの、国の発展にとって重要な高度技術を使用する事業
・A4グループ:技術がA1-A3ほど高度でないものの国内原材料の付加価値を高め、サプライチェーンを強化する事業
・Bグループ:高度技術を使用しないものの、バリューチェーンに とって重要な裾野産業
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2025年の実質GDP成長率の需要項目別寄与度(図4)を見ると、個人消費が伸び悩み、民間消費は2年連続で減速しています。投資は公共建設投資が大きく伸びたほか、民間設備投資もプラスに転じたことで、総固定資本形成はプラスに転じました。
また、世界的な需要拡大を背景に、電気機器や一般機械の輸出が拡大したことで輸出は加速しました。タイ商務省が発表した 2025 年の総輸出額は、過去最高を記録しています。
実質GDP成長率の産業別寄与度(図4)を見ると、好調な輸出を追い風に製造業が 3 年ぶりにプラスに転じました。一方、サービスは、建設業や卸売・小売業が加速しましたが、主力の観光業が落ち込んだ影響により減速しました。
図4:実質GDP成長率(需要項目別寄与度/産業別寄与度)
出所:経済産業省「通商白書2026」(https://www.meti.go.jp/report/tsuhaku2026/index.html)
2026 年 4 月に発表された IMF による経済見通しによると、タイの2026 年の実質 GDP 成長率の見通しは、2025 年から減速し1.5%となる見通しとなっています。
しかし、2027 年以降は緩やかに持ち直しが見込まれると予測されています(図5)。
図5:実質GDP成長率の予測値
出所:International Monetary Fund(https://www.imf.org/en/home)を一部加工して当社作成
※補足:実質GDP成長率は 2026年以降、IMF による予測値
経済産業省が公表した「通商白書2026」によると、タイ向けのFDI投資を見てみると、2023 年~2025年平均では、タイ向けFDIの上位10か国は、1位が中国、2 位がシンガポール、3位が米国、4位が日本となっています。中国からのFDIについては、動画プラットフォームを運営するテクノロジー企業によるデータセンターへの投資等で、急拡大しています。
タイ向けFDIの上位4か国についてセクター内訳を見ると、1位の中国は通信、 電子部品、2位のシンガポールは通信、不動産、3位の米国は通信、OA機器となっており、上位3か国がいずれも通信セクターへ積極的に投資を行っていることが分かります。4位の日本は、不動産、半導体、通信でした。
※補足:本内容は、fDi Marketsのデータを用いており、当該データはグリーンフィールド投資を対象としていることに留意が必要であり、グリーンフィールド以外の投資の状況は反映していない。当該データは、国、 投資セクターごとに情報を提供している点に特徴がある。
2025年のタイの総貿易額(通関ベース)は、輸出が3,396億ドル(前年比約113%)、輸入が輸入3,449億ドル(前年比約113%)でした。輸出、輸入額ともに前年を上回りましたが、貿易収支は赤字となっています。主要貿易品目は(図6)、2024年は自動車・同部品、輸入は原油が首位となっており、主要貿易相手国は(図6)、2024年は、輸出相手国は米国、中国、日本と続き、輸入相手国は中国、日本、台湾となります。
図6:主要貿易品目と主要相手国
出所:外務省「タイ王国(Kingdom of Thailand)基礎データ」
(https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/thailand/index.html)
タイは、インドシナ半島のほぼ中央に位置し、東南アジア諸国の中では陸・海・空の物流インフラが比較的整備された国です。陸路、港湾、航空の観点から解説します。
メコン川流域の大メコン圏にはタイ、カンボジア、ラオス、ミャンマー、ベトナム、中国の6か国があり、主な経済回廊として、東西経済回廊、南北経済回廊、南部経済回廊を形成しています。物流インフラの整備が進むことで、メコンエリア全体のサプライチェーンの一体化が進みます。タイは、そのメコンエリアをつなぐ複数の経済回廊の要所です。
① 南北経済回廊
中国雲南省の昆明からラオスを経由し、タイのバンコクまでを結ぶ約2,000kmの国際道路
② 東西経済回廊
ベトナムのダナンからラオスのサバナケット、タイのムクダハンを経由して、ミャンマーのモーラミャインまでを結ぶ約1,500kmの国際道路
③ 南部経済回廊
ベトナムのホーチミンからカンボジアのプノンペンを経由し、タイのバンコクまでを結ぶ約1,000kmの国際道路
※経済回廊…特定の地理的枠組みで生産、貿易、インフラを結び付けるコネクター(道路)
図7:各経済回廊
出所:政府広報オンライン「HIGHLIGHTING Japan」(https://www.gov-online.go.jp/eng/publicity/book/hlj/html/202311/202311_05_jp.html)
タイの主要な国際港湾(ICD:インランドコンテナデポを含む)(図8)は、レムチャバン港、ラッカバンICD、バンコク港があります。
レムチャバン港は、大水深港でタイの国際港湾の中で最大の取扱量がある港湾です。2023年の世界の港湾別コンテナ取扱個数を見ると、レムチャバン港は約887万TEUの取扱個数があり世界ランキングでは16位でした。日本と比較すると、日本港湾の中では東京港が最も取扱個数が多い港湾で約457万TEU、世界ランキングでは46位となり、レムチャバン港は東京港より取扱量が上回っています。
ラッカバンICDは、レムチャバン港がバンコクから約130km離れており、荷主や港湾の負担軽減、交通量の減少を図るために設立されました。ラッカバンICDはレムチャバン港と鉄道輸送が繋がっており、保税地域のためコンテナの荷受け、荷渡しが可能です。
バンコク港はバンコク市内に隣接している港で、港から消費地へ効率的な陸送が可能な立地となっています。レムチャバン港が開港するまでは、都市部に近いバンコク港がタイの中心となる港湾でした。しかし、増加する取扱貨物量に対応するための荷捌き地を拡張することが困難なこと、またバンコク市内の渋滞緩和や同港が河川港で水深が浅いため大型船の寄港に限界があることから、レムチャバン港の建設にいたっています。
タイの国際空港はいくつかありますが、主要空港となるのは、スワンナプーム国際空港、ドンムアン空港です。(図8)
タイで最も古い空港はドンムアン空港で、スワンナプーム国際空港が稼働する前は、主力の国際空港としての役割を果たしてきました。旅客数の増加等の要因で空港が手狭になったことからスワンナプーム国際空港の建設にいたっています。スワンナプーム国際空港は、タイ最大の国際ハブ空港でタイの国際貨物の約9割以上(2023年)を担っています。
図8:タイの主要国際港湾と国際空港
ランドブリッジ構想は、タイ南部のチュムポーン県(タイ湾)とラノーン県(アマダン海)を高速道路や鉄道などで結ぶ計画です。深海港の設置、高速道路、鉄道、パイプラインを設置することで、混雑するマラッカ海峡を回避し代替する輸送手段となることが期待されています。
以上、ここまでタイのビジネス環境を政策・経済や物流事情の面からお届けしました。
(執筆は2026/7/27時点で、情報は変わる可能性があります)
ここからは、当社の関連物流サービスを紹介します。
タイ社は1995年に設立し、電機精密/半導体・電子部品を取り扱ってきました。
バンコク(本社)、スワンナプーム国際空港他の4事務所、また、倉庫は、ナワナコン(一般倉庫)、バンパコン(一般倉庫およびFZ(Free Zone)倉庫)を運用しています(2026年5月時点)。
タイ社では、FZを含めた倉庫事業を始め、航空・海上輸送、国内配送、通関業務などお客様の様々なロジスティクスニーズにお応えします。
<本社および倉庫ロケーション>
タイ社では税関管轄のFZ(フリーゾーン)倉庫を運営しています。当倉庫をご利用いただくことで、タイに法人を持たないお客様(非居住者)がタイに資産を持ち、タイ国内外からの部材調達や国内外への製品販売が可能になります。タイ国内向けへの即納体制・タイをハブ倉庫とした近隣国への製品販売など、様々な物流効率化を実現します。
<ご利用メリット>
• タイ社が運用するFZ倉庫により、タイで非居住者在庫として資産を持つことができます。
• 非居住者在庫運用により、不測の輸送網の混乱に影響されない安定した部品供給を実現します。
• 日本への輸送をすることなく製品を保管することで、輸送リードタイムを短縮し販売機会の拡大に繋げます。
<非居住者在庫運用の活用事例>
▼サービスURL:FZ倉庫活用による非居住者在庫運用サービス
本サービスは、半導体・電子部品に特化しており、混載サービスの為、コンテナ1本に満たない少量貨物でも対応可能となっています。また発地側はシンガポール社、着地側はタイ社と半導体・電子部品の取扱いに慣れた日通NECロジスティクスグループ一気通貫での対応となります。コスト面では航空輸送より安く、リードタイム面では航空輸送と同等および海上輸送より早い事が特長です。さらにCO2排出量も削減され、SDGsの目標13「気候変動に具体的な対策を」への貢献を実現します。
▼サービスURL:半導体・電子部品クロスボーダートラック輸送サービス
タイで事業を展開する場合、BOIを取得すると様々なメリットが受けられます。しかし、政府機関であるBOIとはタイ語主体のコミュニケーションとなるため、その業務を理解するのが難しいという声をお聞きします。タイ社はBOI管理の代行業務を行っており、自社開発のアプリケーションでお客様のBOI管理効率化に貢献します。
<ご利用メリット>
• BOI管理と通関業務をアプリケーションで連動化し、BOI申請および輸入通関の精度向上を図ります。
• 複雑なBOI管理業務を見える化し、属人的な業務を効率化します。
• BOI免税恩典の申請および取得後の管理方法に関するご相談もお受けします。
▼サービスURL:BOIマネジメントサービス