政策にはデジタルの付く言葉が並んでいます。今年も新しくデジタルに関連した会議体が発足しました。「デジタルライフライン全国総合整備実現会議」という会議体で、 6月28日に経済産業省で第1回会議が開催されました。この“デジタルライフライン”とは一体何か、社会や企業にどのように関係してくるのか、「デジタル田園都市国家構想」との関係から紐解いてお届けします。
まずは、「デジタル田園都市国家構想」から説明してまいります。
デジタル田園都市国家構想は、デジタルの力を活用して地方の社会課題解決を図ろうとする日本の政策です。2022年6月7日に基本方針が閣議決定され、同年12月23日、同方針に基いて策定された2023年度~2027年度までの総合戦略が閣議決定されました。
地方の社会課題解決から取り組む理由として、
・社会情勢の変化
・地方の過疎化・地域産業の衰退が日本経済全体の生産性の足かせとなっていること
が挙げられています。
テレワーク普及や地方移住への関心の高まりなど、社会情勢が変化する中、デジタルを活用した地方の社会課題解決で新たな付加価値を生み出し、地方から全国へとボトムアップの成長に繋げていくとしています。
❶ 年齢3区分*別の人口推移
人口減少及び少子高齢化に伴い、日本の生産年齢人口と言われる15~64歳の人口は、2020年から2030年までに約630万人減少する見込みです。また、65歳以上の人口が占める割合は年々増加し、2020年は28.6%で、2030年では31.2%になる見込みです。
出所)内閣官房「デジタル田園都市国家構想総合戦略 データ集」(https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/digital_denen/pdf/20221226_sankou.pdf)
❷ 全国の人口に占める東京圏の割合
*地方圏:東京圏を除いたもの。東京圏は東京都、千葉県、埼玉県、神奈川県の1都3県。
出所)内閣官房「デジタル田園都市国家構想総合戦略 データ集」(https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/digital_denen/pdf/20221226_sankou.pdf)
❸ 東京圏と地方圏の労働生産性*
労働生産性の水準は地方圏と比べ東京圏が大きく上回っています。
出所)内閣官房「デジタル田園都市国家構想総合戦略 データ集」(https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/digital_denen/pdf/20221226_sankou.pdf)
●デジタルの力を活用した地方の社会課題解決・魅力向上
●デジタル基盤整備
●デジタル人材の育成・確保
●誰一人取り残されないための取組
デジタル田園都市国家構想総合戦略の取組方針
方針 | 項目 |
デジタルの力を活用した地方の社会課題解決・魅力向上 |
①地方に仕事をつくる |
デジタル基盤整備 |
①デジタルインフラの整備 |
デジタル人材の育成・確保 |
①デジタル人材育成プラットフォームの構築 |
誰一人取り残されないための取組 |
①デジタル推進委員の展開 |
出所)内閣官房「デジタル田園都市国家構想総合戦略 本文」を基に作成(https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/digital_denen/pdf/20221223_honbun.pdf)
この取組方針の1つであるデジタル基盤整備に関連して、岸田総理は、2023年3月31日の第12回デジタル田園都市国家構想会議で、デジタル実装の前提となるインフラ整備を強力に推進するためのデジタルライフライン全国総合整備実現会議の設置と、2023年度中のデジタルライフライン全国総合整備計画の策定を西村 経済産業大臣へ指示しました。
次からは、そのデジタルライフライン全国総合整備実現会議と整備計画について説明します。
2023年6月28日に経済産業省で、関係省庁、自治体、産業界の構成員等を集めた第1回「デジタルライフライン全国総合整備実現会議」 が開催されました。
同会議で、今後約10年にわたる「デジタルライフライン全国総合整備計画」を策定・実行していくことになります。計画実現のため官民で集中的に大規模な投資を行い、デジタル技術を急ぎ社会実装するとしています。2024年度にはドローン航路設定や高速道路の自動運転車用レーンの設定といった先行的な取り組みを開始するとしています。
デジタルライフライン全国総合整備計画の検討方針は次の4点になります。
デジタルライフライン全国総合整備計画 検討方針
出所)経済産業省「デジタルライフライン全国総合整備実現会議 第1回事務局資料(方針案・論点)」を基に作成(https://www.meti.go.jp/press/2023/06/20230628004/20230628004.html)
この計画では、人口減少が進む日本で、人手不足・物流危機・災害の激甚化への課題を解決し、デジタルとリアルが融合した地域生活圏を形成することと、単に設備の置き換えをするのではなく、10カ年という計画の中で、新幹線や高速道路の様に順番かつ「全国津々浦々に」ハード・ソフト・ルールを整備・実装していくことがポイントとなります。また、基本コンセプトに「点から線・面へ」、「実証から実装へ」というものがあります。過去、実証(点)で終わってしまったことを踏まえ、当計画では、運営主体からサービス、インフラまで全てを揃えた地域(面)を創出することが重要になっていきます。
次からは、いくつか計画上の重要な要素を取り上げ紹介していきます。
2024年度からの実装に向けた支援策が実施されていく予定です。そうした先行的な取り組みを「アーリーハーベストプロジェクト」として、ドローン航路、自動運転車支援道、インフラ管理のDXの3つのプロジェクトが挙げられています。
それぞれ具体的に紹介します。
出所)経済産業省「デジタルライフライン全国総合整備計画の検討方針について」を基に作成(https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/digital_denen/dai12/shiryou2.pdf)
出所)経済産業省「デジタルライフライン全国総合整備計画の検討方針について」を基に作成(https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/digital_denen/dai12/shiryou2.pdf)
*デジタルツイン:センサーなどから取得したデータをもとに、建物や道路などのインフラ、経済活動、人の流れなど様々なフィジカル空間(現実空間)の要素を、サイバー空間(コンピューターやコンピューターネットワーク上の仮想空間)上に「双子」のように再現したものです。(出所:東京都「デジタルツイン実現プロジェクト」(https://info.tokyo-digitaltwin.metro.tokyo.lg.jp/))
ハード・ソフト・ルールの整備・実装が重要と先述しましたが、それぞれの検討方針も打ち出されていますので紹介します。
この検討方針を見ますと、官民での大規模投資や事業化、規格統一・標準化、先進技術、法整備による安全の担保や効率運用等が重要になってくると言えます。
ハード・ソフト・ルールでの検討方針
区分 | 方針の概要 |
ハード面 |
●環境情報の収集・配信を実現するための低遅延の情報通信網・情報処理基盤や、ヒト・モノの乗換・積替、モビリティの充電・駐車を行うハブとなる拠点を整備する。 |
ソフト面 |
●3D地図等の空間情報のデータを整備するとともに、検索インデックスとして3次元空間IDの規格を整備し、多数のシステムで分散的に空間情報を収集・統合・配信・更新する3次元空間情報基盤や運行管理データ連携基盤等を構築する。 |
ルール面 |
●運行に関わる各システムのデータを可視化して制御を自動化・最適化するとともに、リスクマネジメントを促すインセンティブ設定やヒヤリハットを含む事故時の原因究明や対策を即座に講じるためのガバナンスの仕組みを整備し、イノベーションを促進するアジャイルガバナンスを実践する。 |
出所)経済産業省「デジタルライフライン全国総合整備計画の検討方針について」を基に作成(https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/digital_denen/dai12/shiryou2.pdf)
計画の策定と実行を推進していく運営主体に関しては、以下のような分担が検討されています。民間企業の役割を見ますと、「公益性に資する取組」と「競争的な取組」に分かれて役割定義されていく方針です。
運営主体の特定とその役割の定義に関する方針
※民間事業者のうち公益に資する取組として事業を実施する事業者を指す。
出所)経済産業省「デジタルライフライン全国総合整備実現会議 第1回事務局資料(方針案・論点)」(https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/digital_architecture/lifeline_kaigi/dai1/siryo_3r.pdf)
民間の「公益に資する取組」の例として、先述のルール面の例示にありました公益デジタルプラットフォームの認定制度を紹介します。
複数の企業をまたいだデータ共有を行うデータ連携基盤の担い手に対して、一定程度の公益性があることを担保する仕組みを創設するとしていて、その仕組みの例として、公益デジタルプラットフォームの認定制度が検討されています。
この制度の運営主体は、公益デジタルプラットフォーマー、デジタル基盤運営事業者、認定主体の3つから構成されます。「公益デジタルプラットフォーマー」では、その主体者は産業界にて検討が必要としていますので、民間になると思われます。「デジタル基盤運営事業者」は、IPA(経済産業省のIT政策実施機関)で、経済産業省、デジタル庁および産業界と連携して運営主体を検討するとしています。「認定主体」は、経済産業省が関係省庁と連携して検討するとしています。
デジタルライフラインを官民連携で運営することになるという印象ですが、参画する企業は、どのように公益性を確保しながら自社の利益を追求することが出来るのか、こうした認定制度の在り方が注目されるところだと思います。
最後に、デジタルライフライン構造の設計思想について紹介します。
ビジネス、サービス、システム、データのそれぞれの視点から各構造が設計されていきます。建物・道路・柱(電柱等)は既存アセットを含めて活用し、IoT機器・通信インフラ・データ・ソフトウェアに投資していくとしています。
全国総合整備の観点からのアーキテクチャの設計思想
出所)経済産業省「デジタルライフライン全国総合整備実現会議 第1回事務局資料(方針案・論点)」(https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/digital_architecture/lifeline_kaigi/dai1/siryo_3r.pdf)
今後、秋頃に第2回の実現会議、冬頃に第3回の実現会議が開催され、第3回で事務局から計画案が提示される予定です。そして2023年度末頃に計画が閣議決定される予定です。
アーリーハーベストプロジェクトの内容は、比較的身近な先行的取り組みとなり、かつ、この結果がハード・ソフト・ルールの策定に影響するため、注目をしていきたいと思います。
以上、デジタルライフラインのこれからについてお届けました。
(執筆は2023/8/31時点で、情報は変わる可能性があります)
ここからは、当社の関連物流サービスを紹介します。
世の中がデジタル実装されていく際には、アプリケーションなどのソフト面だけでなく、様々な情報通信機器や装置などが増加/更新されることになります。
次から、デジタル社会に関わる企業様を支える物流サービスを紹介します。
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