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日本政府の物流革新に向けた取り組み|物流2法改正を解説!

作成者: NECL|2025.02.28

日本政府の物流革新に向けた取り組み
-物流2法改正を解説!-

 

2024年515日、物流の生産性向上適性運賃の収受を図るための「流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律(及び 貨物自動車運送事業法の一部を改正する法律」(以下、物流2法改正が公布されました。翌年の2025128日には施行期日を定める政令及びその施行に必要な規定の整備等を行う政令が閣議決定され、施行日は同年41に決まりました。
(※)法律の名称は「物資の流通の効率化に関する法律」に変更

今回のブログは、施行が間近に迫ったこの物流2法の改正についてご紹介いたします。

改正内容は荷主・物流事業者に対する規制的措置トラック事業者の取引に対する規制的措置軽トラック事業者に対する規制的措置の3点です。

お時間がありましたらぜひお読みください。

 \関連ブログ/
 「日本政府の物流革新に向けた取り組み-2024年問題対応への政策ポイント-」(20245月)
  https://www.nittsu-necl.co.jp/blog/20240530

 

 

背景

日本は、人手不足トラックドライバーの働き方改革による時間外労働の上限規制の適用などで、このまま何も対策しなければ物流が停滞するという物流の「2024年問題」に直面しています。
こうした状況の中で、物流事業者(運送・倉庫など)だけでなく、荷主企業(発荷主・着荷主)や消費者も一緒になった課題解決に向けた取り組みを進め、持続可能な物流の実現に繋げることが必要不可欠と言われています。
これまで官民で様々な取り組みがされてきました。その中でも政府の取り組みをまとめたものが図1になります。今回のニュースレターでは、今年4月1日から施行されます、この図1の右下「物資の流通の効率化に関する法律」及び「貨物自動車運送事業法」の2つの物流関連法(物流2法)の改正を解説します。

 

[図1]物流改革に関する政府の取り組み

出所:国土交通省、経済産業省、農林水産省の資料を参考に当社作成

 

改正内容 


荷主・物流事業者に対する規制的措置 【物資の流通の効率化に関する法律】

国土交通省、経済産業省及び農林水産省は、2024年5月15日に公布された「物資の流通の効率化に関する法律」(以下、改正物流効率化法)の荷主・物流事業者等に対する規制的措置の施行に向けた検討を行うため合同会議を開催し、基本方針、判断基準、特定事業者の指定基準等の内容について審議してきました。また、同年11月には、規制の具体的な内容を示した「合同会議取りまとめ」を公表しました。

当該改正の施行は、公布の日から1年以内と2年以内とに分かれています。

1年以内は基本方針、努力義務・判断基準で、2年以内は特定事業者の指定基準、特定事業者の義務等が施行されます(図2、図3ご参照)。2025年1月28日に、施行期日を定める政令及びその施行に必要な規定の整備等を行う政令が制定され1年以内の規定に関する施行が同年4月1日に決定しました。同年2月18日には、基本方針や、事業者の取り組むべき措置についての判断基準を定める省令等が公布されました(施行は同年4月1日)。なお、2年以内の規定に関する施行日や特定事業者の指定基準の公布はこれからとなります

[図2]荷主・物流事業者に対する規制的措置の概要

 

[図3]改正法関連のスケジュール

図2及び図3の出所:「流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律 及び 貨物⾃動⾞運送事業法の⼀部を改正する法律」の施⾏に向けた検討状況について(国⼟交通省・経済産業省・農林⽔産省。2024年6⽉20⽇、21⽇説明会資料)(https://www.meti.go.jp/policy/economy/distribution/setsumeikaishiryo.html

 

次から1年以内と2年以内の内容に分けて解説します。

 

1.公布から1年以内に施行の規定(2025年4月1日施行)-すべての事業者が対象-

荷主(第一種、第二種)、物流事業者(トラック、倉庫、港湾運送、航空運送、鉄道)に対し、物流効率化のために取り組むべき措置の努力義務が課されました。
※措置についての規定は他に有効と認められる措置があればこの限りではないとされています。

第一種荷主とは
、自らの事業に関し継続して運送事業者と運送契約を行う事業者で主に発荷主が該当します。第二種荷主とは、運送事業者との運送契約はなく自らの事業に関し継続して運転者から貨物の受け取り・引き渡しのみを行う事業者で、主に着荷主が該当します(図4ご参照)。

[図4]荷主の区分

出所:農林水産省林野庁「【周知依頼+参考資料送付】改正物流効率化法合同会議取りまとめ等の公表」(2024年12月2日)(https://www.nichigosho.net/topics/20241202-2/


次から、努力義務等について事業者別に解説します。

 

(1) 各事業者の努力義務

事業者別に、積載率の向上、荷待ち時間の短縮、荷役等の短縮及びそれらの取組の実効性を確保する措置が努力義務として課されました(図5ご参照)。
2025年2月18日に公布された判断基準から、事業者別に努力義務の内容をご紹介します。

[図5]各事業者の努力義務

出所:国土交通省 流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律及び貨物自動車運送事業法の一部を改正する法律の施行に伴う関係省令・告示(2025年2月18日報道発表資料)を基に当社作成(https://www.mlit.go.jp/report/press/tokatsu01_hh_000854.html) 

① 荷主

積載率の向上(運転手一人当たりの一回の運送ごとの貨物の重量の増加)
 ・貨物自動車運送事業者等が他の貨物との積合せや配送の共同化、
  帰りの貨物の積載などが出来るような時間を確保

 ・貨物の受渡し日や時間帯等の適切な集約を行い貨物量の平準化
 ・配車システムの導入等により、配車計画・運行経路を最適化
 ・上記の取り組みが適切かつ円滑に行われるよう、開発、生産、流通、販売、
  調達、在庫管理等の各部門間連携を促進


 ※第二種荷主は上記取り組みを第一種荷主が円滑に実施する為に必要な協力を行う

運転者の荷待ち時間の短縮
 ・一時に多数のトラックが到着して混雑しないよう、貨物受渡の日時や時間帯を分散
 ・トラック予約受付システムを導入・活用し、トラック到着時刻等の調整
 ・寄託先に対する入庫・出庫の発注を早期に行う等で、倉庫における作業時間の
  確保や調整による対応の分散

 ※第二種荷主も上記と同様

運転者の荷役等時間の短縮
 ・次の措置により荷役等の効率化を図る
  ア.パレットやカゴ車等の輸送器具の導入
  イ.パレットの標準化で一貫パレチゼーション(各物流プロセスにおいて
    同一のパレットを使用すること)を実現
  ウ.運転者の荷役等を省力化するための荷造り
  エ.積卸し作業等の効率化のためフォークリフト等の人員を適切に配置
    (第二種荷主も同様)
 ・第二種荷主、物流事業者に貨物の事前情報を通知
 ・品質や数量検査の機械を導入し、検査を効率化(第二種荷主も同様)
 ・荷捌き場を貨物の量に応じて適切に確保し荷役等の環境を整備(第二種荷主も同様)

実効性の確保
 ・関係者との連携を通じた効率化のための物流データ標準化
 ・運送役務等の事情に応じた価格の決定による費用の把握
 ・国、消費者、関係団体、関係事業者との連携

参考:国土交通省「荷主の貨物自動車運送役務の持続可能な提供の確保に資する運転者の運送及び荷役等の効率化に関する判断の基準となるべき事項を定める省令」(2025年2月18日公布)(https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001864742.pdf

 

② 貨物自動車運送事業者等

積載率の向上(運転手一人当たりの一回の運送ごとの貨物の重量の増加)
 ・複数の荷主の貨物を積み合わせる等で輸送網を集約
 ・関係事業者と配送を共同化
 ・運送帰路にも貨物を積載する等し実車率(貨物を積載した状態での走行距離の割合)を増加
 ・配車システムの導入等により、配車計画・運行経路を最適化
 ・輸送量に応じた大型車両の導入等で、運送ごとの積載貨物重量を増加

実効性の確保
 ・実施した取組及びその効果の適切な把握
 ・必要に応じて荷主への取組を実施するための運賃等の提案
 ・関係者との円滑な連携のための物流データ標準化
 ・国、消費者、関係団体及び関係事業者との連携

参考:国土交通省「貨物自動車運送事業者等の貨物自動車運送役務の持続可能な提供の確保に資する運転者の運送及び荷役等の効率化に関する判断の基準となるべき事項を定める省令」(2025年2月18日公布)(https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001864740.pdf

 

③ 貨物自動車関連事業者(倉庫、港湾運送、航空運送、鉄道)

◇運転者の荷待ち時間の短縮(倉庫業者のみ)
 ・一時に多数のトラックが到着して混雑しないよう、貨物受渡の日時や時間帯を分散
 ・倉庫業者の管理施設においてトラック予約受付システムを導入・活用し、
  トラック到着時刻等を調整

運転者の荷役等時間の短縮
 ・荷捌き場を拡張又は貨物の量に応じ確保し、荷役等の環境を整備
 ・搬出入手順のマニュアル整備・周知等で迅速に搬出入作業を実施
 ・フォークリフト等の人員の適切配置発送先別仕分けの有償対応
  荷主からの
一環パレチゼーションに有償協力等により、荷役等の効率化
 ・品質や数量検査の機械を導入し、検査を効率化

実効性の確保
 ・取組に関する責任者の選任や体制整備、従業者への教育等
 ・実施した取組及びその効果を適切に把握
 ・荷主等への取組に関する提案
 ・関係者との連携を通じた効率化のための物流データ標準化
 ・無人搬送車の導入等で作業の自動化
 ・国、消費者、関係団体及び関係事業者との連携

参考:国土交通省「貨物自動車関連事業者の貨物自動車運送役務の持続可能な提供の確保に資する運転者の運送及び荷役等の効率化に関する判断の基準となるべき事項を定める省令」(2025年2月18日公布)(https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001864741.pdf

 

(2) 国による指導・助言、調査・公表

国は、特定事業者の措置の実施について必要な指導及び助言をすることが出来るとしています。
また、「合同会議取りまとめ」(2024年11月27日、国土交通省、経済産業省及び農林水産省)では、荷主などの判断基準に関して調査を行い、その結果を公表するとしています。当該調査は、物流事業者(トラック、倉庫等)を対象として定期的に行い、荷主の取組状況について、荷待ち・荷役等時間の短縮、積載効率の向上等に関する項目別で把握するとしています。回答は点数化し、高い者、低い者含めて公表するとしていて、公表前に荷主等にもヒアリングをするとしています。悪質な事例を捕捉した場合には、トラック・物流Gメンや公正取引委員会による働きかけや要請に繋げていくとしています。

 

2.公布から2年以内に施行の規定(2026年4月以降施行)-一定規模以上の事業者が対象-

一定規模以上の荷主や物流事業者(トラック、倉庫)を特定事業者とし、物流効率化のための中長期計画の作成、努力義務の実施状況の定期報告等が義務付けられました。施行は2026年度4月以降とされています。
ここでは、現時点で公表されている内容から特定事業者の指定基準や義務化される規定の概要を解説します。

(1) 指定基準

特定事業者の指定基準はこれから国が政令で定めるとされていますが、国土交通省、経済産業省及び農林水産省の「合同会議取りまとめ」(2024年11月27日発表)では以下の考え方が示されていますのでご紹介します(図6ご参照)。

[図6]特定事業者の指定基準

 

① 特定荷主の指定基準

取扱貨物の重量が9万トン以上(各年度)
第一種荷主、第二種荷主は合算せず、それぞれの立場で算定

ア.特定第一種荷主
 各年度に貨物自動車運送事業者又は貨物利用運送事業者に運送を行わせた貨物の合計重量
イ.特定第二種荷主
 各年度に自らの事業に関して運転者から受け取る/引き渡す、もしくは他の者をして運転者から
 受け取らせる/引き渡させる貨物の合計重量
ウ.特定連鎖化事業者(連鎖化事業者:フランチャイズチェーンの本部)
 各年度に当該連鎖化事業所の連鎖対象者が運転者から受け取るもしくは他の者をして運転者から
 受け取らせる貨物の合計重量

※イ及びウは日時等の指定を運転者に指示できないものを除く

 

② 特定倉庫事業者の指定基準

貨物保管量が70万トン以上(各年度)
寄託された入庫貨物の年度の合計重量

 

③ 特定貨物自動車運送事業者等の指定基準

保有車両台数が150台以上(各年度末時点)
年度末において保有する事業用自動車の台数

 

(2) 義務化の内容

同じく「合同会議取りまとめ」より、義務化の内容3点をご紹介します。物流統括管理者選任は特定荷主のみ、他は特定荷主・特定物流事業者が対象です(図7ご参照)。

[図7]特定事業者の義務化対象

出所:経済産業省「産業構造審議会 商務流通情報分科会 流通小委員会・交通政策審議会 交通体系分科会 物流部会・食料・農業・農村政策審議会 食料産業部会 物流小委員会 合同会議 とりまとめ」(2024年11月27日)を基に当社作成
https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/shomu_ryutsu/distribution/20241127_report.html

① 中長期的な計画の作成

判断基準を踏まえた措置の実施に関する中長期的な計画を作成。毎年度提出することを基本に、計画に変更が無い場合は5年に1度提出。

② 努力義務の実施状況の定期報告

特定事業者として指定を受けた日の属する年度の翌年度以降、毎年度、努力義務の実施状況を報告。事業者の判断基準の遵守状況、関連事業者との取組状況、荷待ち時間等(荷待ち時間+荷役等時間)の計測結果を報告。

③ 物流統括管理者(CLO)の選任

物流統括管理者は、調達、生産、販売等の各分野を統合して流通全体を効率化する事業運営上の決定権を主導する役割。商慣行の見直しやオペレーション調整、物流標準化等にも取り組む。基本として、重要な経営判断を行う役員等の経営幹部から選任されることが必要とされている。
※CLO:Chief Logistics Officerの略

 

(3) 国による勧告、命令

国は、特定事業者の措置の実施に関する状況が著しく不十分と認めるときは、当該特定事業者に対し、当該措置をとるべき旨の勧告をすることが出来るとしています。また、その勧告に従わなかったときは、その旨を公表することや当該措置を取るべきことを命ずることが出来るとしています。

 

3.目標値

効率化推進の目標値は2025年2月18日に公布され(図8ご参照)、施行は同年4月1日と定められました。

(1) 運転者の荷待ち時間等の短縮

2028年度までに、全国の貨物自動車による輸送のうち5割の運行で1時間短縮する
・現状の一運行あたりの荷待ち時間等にかかる時間が合計3時間と推計されていることから
 合計2時間以内を目標とする

(2) 積載率の向上

2028年度までに、全国の貨物自動車による輸送のうち5割の車両で50%を目指し、
 全体の車両で44%を目指す(現状の水準は40%以下)

こうした目標達成のため、国としても設備投資、モーダルシフト、大量輸送等の技術開発、フィジカルインターネット実現による物流標準化、高度物流人材の確保・育成、国民への広報等を支援していくとしています。

[図8]目標値

出所:国土交通省「貨物自動車運送役務の持続可能な提供の確保に資する運転者の運送及び荷役等の効率化の推進に関する基本的な方針」(2025年2月18日公布)を基に当社作成
https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001864743.pdf

参考資料:国土交通省 物流改正法
https://www.mlit.go.jp/seisakutokatsu/freight/seisakutokatsu_freight_mn1_000029.html)、
経済産業省「産業構造審議会 商務流通情報分科会 流通小委員会・交通政策審議会 交通体系分科会 物流部会・食料・農業・農村政策審議会 食料産業部会 物流小委員会 合同会議 とりまとめ」(2024年11月27日)
https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/shomu_ryutsu/distribution/20241127_report.html

 

 

トラック事業者の取引に対する規制的措置 【貨物自動車運送事業法】

多重下請構造や口頭による運送依頼等が適正な運賃・料金の収受に当たっての大きな課題となっていたことから、今回、以下の規制的措置が導入されています。

1.運送契約締結時等の書面交付義務
2.委託先の健全な事業運営の確保に資する取組(健全化措置)を行う努力義務、
  当該取組に関する運送利用管理規程の作成・運送利用管理者の選任義務
3.実運送事業者の名称等を記載した実運送体制管理簿の作成・保存義務、など

次から、各項目を説明します。

 

1.運送契約締結時等の書面交付義務 -荷主への書面交付義務も-
今回の貨物自動車運送事業法改正では、対象はほとんどが物流事業者ですが、「自らの事業に関して貨物自動車運送事業者との間で運送契約を締結して貨物の運送を委託する者であって、貨物自動車運送事業者以外のもの」を真荷主とし、一定の条件においては新たに荷主についても書面交付義務が課されています
 

真荷主貨物自動車運送事業者は、運送の役務の内容及び対価(運送契約に荷役作業・附帯業務等が含まれる場合にはその内容及び対価)等について記載した書面を、相互に公布しなければなりません

交付書面への法定事項(記載事項)
 ①運送の役務の内容及び対価
 ②運送契約に運送の役務以外の役務(荷役作業、附帯業務等)が含まれる場合には、
  その内容及び対価
 ③その他特別に生じる費用に係る料金(例:有料道路利用料、燃料サーチャージなど)
 ④運送契約の当事者の氏名又は名称及び住所
 ⑤運賃・料金の支払方法
 ⑥書面の交付年月日

以下の図9は、受託パターンごとに、どの取引上で書面交付が必要となるかが整理された図解です。

今回改正の貨物自動車運送事業法 第12条の規定に基づく書面交付では、荷主が貨物自動車運送事業者(特定貨物自動車運送事業者を除く)へ運送委託するケース(図9のパターン1、3)では、荷主が「真荷主」となり相互に書面交付の義務が課されています。
荷主が貨物利用運送事業者に運送委託するケース(図9のパターン2)では、貨物利用運送事業者が利用する貨物自動車運送事業者と相互に書面交付することが義務付けられています。

同じく第24条の規定に基づく書面交付では、貨物自動車運送事業者・貨物利用運送事業者が他の同事業者の運送を利用するときに委託元から委託先に対して書面交付することが義務付けられます。

[図9]書面交付の義務付けのパターン

出所:国土交通省「改正貨物自動車運送事業法(令和7年4月1日施行)について」
https://www.mlit.go.jp/jidosha/jidosha_mn4_000014.html

罰則や行政処分
書面交付義務に違反した場合、罰則はありません。
ただし、貨物自動車運送事業者については、貨物自動車運送事業法の第33条に基づく行政処分の対象となる可能性があります。荷主については、トラック・物流Gメンによる是正指導の対象となる可能性があります。

2.委託先の健全な事業運営の確保に資する取組(健全化措置)を行う努力義務、当該取組に関する運送利用管理規程の作成・運送利用管理者の選任義務

(1) 健全化措置の努力義務

貨物自動車運送事業者等が、他の貨物自動車運送事業者の行う運送を利用する際、以下の措置を講じ委託先事業者の健全な運営を確保するよう努めることとされています。

措置の内容
①利用する運送に要する費用の概算額を把握した上で、当該概算額を勘案して利用の申込みをすること。
②自らが引き受ける貨物の運送について荷主が提示する運賃・料金が①の概算額を下回る場合にあっては、当該荷主に対し、運賃・料金について交渉をしたい旨を申し出ること。
③委託先の一般貨物自動車運送事業者が更に他の一般貨物自動車運送事業者の行う運送を利用する場合に関し、例えば「二以上の段階にわたる委託の制限(再々委託の制限)」等の条件を付すこと。

罰則や行政処分
罰則や行政処分は設けられていません。他方で、運賃・料金を不当に据え置くなどの違反行為の疑いが認められる事業者については、トラック・物流Gメンによる是正指導の対象となります。

(2) 運送利用管理規程の作成・運送利用管理者の選任義務、国土交通大臣への届け出

健全化措置の実効性を高めるため、一定規模以上の貨物自動車運送事業者について課される義務です。
対象となる具体的な条件は以下となります。
・前年度に行った貨物自動車利用運送に係る貨物取扱量の合計量が100万トン以上の
 一般貨物自動車運送事業者及び特定貨物自動車運送事業者
・貨物利用運送事業者は対象外

罰則や行政処分
行政処分の対象となる可能性があります。また、「当規程の届け出をせず、または届け出た規程によらずに事業を行ったとき」または「当管理者の届け出をせず、または虚偽の届出をしたとき」は百万円以下の罰金が科されることになります。

(3) 実運送事業者の名称等を記載した実運送体制管理簿の作成・保存義務

貨物軽自動車運送事業者を除く貨物自動車運送事業者(元請事業者)は、真荷主から委託された1.5トン以上の貨物の運送について、他の貨物自動車運送事業者の行う運送を利用したときは、貨物の運送ごとに以下の事項を記載した実運送体制管理簿を作成し、当該運送が完了した日から1年間、保存する義務が課されます。
①実運送事業者の商号又は名称
②実運送事業者が実運送を行う貨物の内容及び区間
③実運送事業者の請負階層

元請事業者が実運送事業者の請負階層を把握し管理簿を作成できるようにするため、図10のように情報の伝達フローが国土交通省ウェブサイトで紹介されています。

[図10]実運送体制管理簿の作成に必要な情報の通知フロー

出所:国土交通省「改正貨物自動車運送事業法(令和7年4月1日施行)について」
https://www.mlit.go.jp/jidosha/jidosha_mn4_000014.html

罰則や行政処分
罰則はありませんが、管理簿の作成・保存義務違反、管理簿に係る通知義務違反をした場合、貨物利用運送事業法の第33条に基づく行政処分の対象となる可能性があります。

 

参考資料:国土交通省「改正貨物自動車運送事業法(令和7年4月1日施行)について」
https://www.mlit.go.jp/jidosha/jidosha_mn4_000014.html

 

 

軽トラック事業者に対する規制的措置 【貨物自動車運送事業法】

軽トラック等による運送は、EC市場の拡大に伴い、消費者へ荷物を届ける手段として需要が拡大しています。軽トラック含む軽自動車および二輪自動車を使用し(図11ご参照)、有償で貨物を運送する事業者を「貨物軽自動車運送事業者」といいます。

[図11]車格ごとの規制の違い

出所:国土交通省 貨物軽自動車運送事業適正化協議会 会議資料(https://www.mlit.go.jp/jidosha/jidosha_tk2_000154.html

運送需要が拡大する一方で、保有台数1万台当たりの事業用貨物軽自動車の死亡・重傷事故件数が、平成28年から令和5年にかけて約4割増加していることから、同事業者の安全対策を強化する必要があるとして、以下のような安全対策項目が新たに義務付けられました(図12ご参照)。
・ 貨物軽自動車安全管理者の講習受講
・ 貨物軽自動車安全管理者の選任及び届出
・ 初任運転者等への特別な指導及び適性診断の受診
・ 業務の記録
・ 事故の記録
・ 国土交通大臣への事故報告

[図12]各安全対策項目の概要

出所:国土交通省「貨物軽自動車運送事業における安全対策を強化するための制度改正について」を基に当社作成
https://www.mlit.go.jp/jidosha/jidosha_tk2_000172.html

罰則や行政処分
法令違反が判明した場合は、文書警告、自動車の使用停止、事業停止などの行政処分が行われるとともに、改善についての命令等の措置が講じられます。
今回の規制強化に関する罰則と行政処分は、以下と定められています。
・重大な事故を引き起こしたときに、報告せず、又は虚偽の報告をした場合:50万円以下の過料
・貨物軽自動車安全管理者を選任する規定に違反した場合:100万円以下の罰金
・貨物軽自動車安全管理者の選任もしくは解任に係る届出をせず、又は虚偽の届出をした場合
 :100万円以下の罰金
・行政処分の具体的な基準については今後制定される予定

※過料とは:ペナルティの性格をもち刑法は適用されず前科はつかない。
 罰金とは:犯罪行為に科せられる刑罰で前科がつく。

参考資料:国土交通省「貨物軽自動車運送事業における安全対策を強化するための制度改正について」
https://www.mlit.go.jp/jidosha/jidosha_tk2_000172.html

 

 

今後の動向

改正物流効率化法では、義務化された特定事業者の中長期的計画の提出を2027年4月以降から開始するとしています。当該計画は、2026年4月以降から選任が義務化される「物流統括管理者」が主導して作成、報告することが求められるため、対象となる事業者において「物流統括管理者」が期待される役割を理解することは重要と言えます。今後、国はガイドライン等でこれを示すことや、問合せ先の設置等を検討するとしています。

改正貨物自動車運送事業法は主に物流事業者が対象ですが、書面交付義務違反や運賃・料金を不当に据え置くなどの違反行為については、荷主もトラック・物流Gメンによる是正指導の対象となる可能性がありますので、今後も適切な対応が求められます。

引き続き動向を注視し当ブログでも続報をお届けしていきたいと思います。

以上、ここまで物流2法改正を解説いたしました。
当社でも今回ご紹介した規制的措置に対応すべく社内点検・法令対応、日々の安全配慮や定期的教育など対応を図っております。お客様の効率化に繋がるよう、混載便によるネットワーク網での輸送サービスのご提供や、お客様の輸送網見直しのご提案等も行なっております。物流でお悩みのことがございましたら、ご相談ください。
(執筆は2025/2/27時点で、情報は変わる可能性があります)