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『物流マクロ市況』(日本)を解説|2025年7月版

作成者: NECL|2025.08.01

『物流マクロ市況』(日本)を解説|2025年7月版


今回は今年4月にお届けしました『物流マクロ市況』の最新版をお届けします。
「物流」について、関係する各種指標やデータを用い、業界全体の市場動向を解説しております。
お時間がありましたらぜひお読みください。

 

はじめに:物流に影響を与える要素

図1の概略図のように、経済指標や需給(需要と供給)は生産動向に関わり貨物の動きや量に大きく影響します。国内外の規制や政策、国際貿易情勢、天候、インフラ、労働力などは物流事業に直接影響を与えます。米国トランプ関税のように先が読めないものもあります。今回ご紹介する指標がすべてではありませんが、こうした観点から関連する個々の指標をお届けします。

[図1]物流に影響を与える要素

 

物流マクロ市況:日本経済、各物流指標

 

①日本経済

最初に日本経済の状況です。

内閣府が6月に発表した「月例経済報告(令和7年6月)」によりますと、景気は緩やかに回復しているとのことです。しかし、米国の通商政策の不透明感、物価上昇の継続等が景気を下押しするリスクになっているとも伝えています。

<企業部門>
財務省が6月に発表した「四半期別 法人企業統計調査」によりますと、2025年1-3月期の金融業、保険業を除く全業種は、売上高、営業利益、設備投資、企業の内部留保(利益剰余金)で過去最高の金額を更新しました(図2ご参照)。

[図2]四半期別 法人企業統計調査の結果概要(2025年1-3月期)

売上高は、製造業では輸送用機械、情報通信機械、非製造業では卸売業・小売業、サービス業が特に増収に寄与しました。経常利益は、非製造業の建設業、不動産業が増益を牽引。製造業は輸送用機械、食料品を中心に減益となりました。

<家計部門>
総務省の消費者物価指数*を見ますと、2025年6月の「生鮮食品を除く消費者物価指数」は、前年同月比で3.3%上昇となりました(図3中のグラフご参照)。米類を中心とした食料品の値上げの影響を受け、高い伸び率となりました。前年同月比プラスの状況はこれで46カ月連続となりました。

*消費者物価指数とは:小売り段階の財およびサービスの物価の動き。経済を見るきわめて重要な指標となる。CPI(Consumer Price Index)とも呼ばれる。

[図3]消費者物価指数

 

 

②物流関連指標

次に、物流に関する次の8項目の市況をご紹介します。
減少・横這い傾向ですがコロナ禍前の水準より高い状態が続いています。

・道路貨物輸送、宅配便、海上貨物輸送、航空貨物輸送価格指数
・原油価格(輸入)
・小売軽油価格
・倉庫価格指数
・事業用電力、都市ガス、上水道価格指数
・全国最低賃金
・段ボール箱、梱包用木材価格指数
・ナフサ価格(輸入)

◆道路貨物輸送、宅配便、海上貨物輸送、航空貨物輸送価格指数

こちらの図4は、企業間で取引されるサービス価格の変動を日本銀行が測定した「企業向けサービス価格指数[2020年基準]」のデータから作成したグラフです。
航空貨物輸送運賃は下降基調で、5月は2020年基準より低下しています。
一方で、道路貨物輸送、海上貨物輸送は横這いです。宅配便は4月よりも2ポイント上昇し今後も上昇が見込まれます。

[図4]道路貨物輸送・宅配便・海上貨物輸送・航空貨物輸送価格指数

 

◆原油価格(輸入)

こちらの図5は、財務省の貿易統計から作成した輸入の原油価格の推移です。
2024年以降は7月をピークに減少傾向でした。2025年1月からふたたび上昇しましたが、3月から下降傾向となりました。4月は73,526円/キロリットルで、前年同月比では▲10.2ポイントと大幅に下降しました。

[図5]原油価格(輸入)

 

◆小売軽油価格

こちらの図6は、資源エネルギー庁の石油製品調査の週次データから作成した小売軽油価格の推移です。
2025年7月14日は153.4円/リットルで、前年の同時期と比べ▲1.4ポイントと減少しました。2年前の同時期と比べるとほぼ同等の水準になっています。

政府は5月22日から段階的にガソリン価格を引き下げる措置を講じると決定しました。具体的には、ガソリンと軽油は1リットルあたり10円、重油や灯油は5円程度、航空機燃料は4円程度で、これを段階的に引き下げるとしています。

[図6]小売軽油価格

 

◆倉庫価格指数

こちらの図7は、国土交通省の不動産価格指数から作成した倉庫と工場の価格指数のグラフです。
2025年第1四半期の倉庫・工場の価格指数は、全国、三大都市圏ともに大幅に下降しました。倉庫については供給過多の状況が背景にあると考えられます。

[図7]倉庫価格指数


◆事業用電力・都市ガス・上水道価格指数

こちらの図8は、生産者段階における出荷時点の生産者価格を日本銀行が調査した「国内企業物価指数[2020年基準]」のデータから作成したグラフです。
事業用電力・都市ガスは、高い水準で推移していますが、6月は各項目で前月より2ポイント減少しました。ロシアのウクライナ侵攻後の価格上昇は、政府の補助により抑制されてきましたが、侵攻前と比較すると高水準が継続しています。

以下は、ロシアのウクライナ侵攻後、日本政府による電気・ガス料金への補助期間です。
 2023年1月~2024年5月、2024年8月~10月、2025年1月~3月、7月~9月

[図8]事業用電力・都市ガス・上水道価格指数

 

◆全国最低賃金

こちらの図9は、厚生労働省の全国最低賃金の推移です。
最低賃金とは、最低賃金法に基づき国が賃金の最低額を定めたもので、使用者は、その最低賃金額以上の賃金を労働者に支払わなければならないとされています。
政策により最低賃金は上昇中です。政府は2020年代には1500円にする目標を掲げています。

[図9]全国最低賃金



◆段ボール箱・梱包用木材価格指数

こちらの図10は、段ボール箱や梱包用木材といった物流で使用する資材の価格指数の推移です。先述の事業用電力などと同様の日本銀行による「国内企業物価指数[2020年基準]」を使用して作成しています。
2021年のウッドショック*から急上昇し、そのまま高水準で推移を続けています。梱包用木材は3月に5ポイント上昇していましたが6月は微減となりました。紙段ボール箱は微増となりました。

*ウッドショック:2021年、コロナ禍による需給バランス崩壊やコンテナ不足、米国の住宅需要急増等の要因で木材が高騰。輸入材の代替えとなる国産材も需要が高まり価格が上昇。現在も輸入材の価格上昇、供給量が不安定なことにより、ウッドショック前の水準に戻らず。

[図10]段ボール箱・梱包用木材価格指数



◆ナフサ価格(輸入)

こちらの図11は、財務省の貿易統計から作成した輸入のナフサ価格の推移です。ナフサはポリエチレンやポリプロピレンといったプラスチック等の原料で原油から精製されます。物流でよく使用する資材類の原料となります。
2025年4月は68,215円/キロリットルで、前年同月比で▲9.7ポイントと大幅に下降しました。

[図11]ナフサ価格(輸入)

 

以上、ここまで『物流マクロ市況』をお届けしました。お読みいただきありがとうございました。

各データの公表時期が分かれるためデータの時期にばらつきはありますが、現在の状況把握のお役に立てればと思います。今後もさまざまな視点から物流マクロ市況をレポートしていきたいと思いますので、次回もお読みいただければ嬉しく思います。

※なお、当記事でご紹介するデータは記事作成時点(2025年7月23日)で公表されているものです。公表後に修正される可能性がございますので、ご利用の際は情報元にアクセスいただきご確認頂くことをおすすめいたします。

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