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フォワーディングニュース拡大版|国際輸送 混乱の現在地

目次

    フォワーディングニュース拡大版|国際輸送 混乱の現在地


    今回は、年初にお届けしました国際輸送動向の現在地をお送りいたします。
    「海上輸送」、「航空輸送」に分け、動向と対応策などを解説していきます。
    お時間がありましたらぜひお読みください。

     

    海上輸送動向

    国土交通省の『数字で見る海事2024』によると、世界の海上輸送量は年々増加傾向で、2023年の輸送量は過去10年で一番大きく、約123億トンとなる推計です。この海上輸送は、世界の貿易量の80%以上を占めており、また、日本の輸出入量でも99.6%を占める重要な輸送モードです。

    昨今、海上輸送に大きな影響を与えた事象といえば、
     ①中東情勢悪化による紅海ルート(スエズ運河)回避
     ②異常気象による水不足でパナマ運河の船舶通航制限
     ③米東海岸の港湾労組による大規模ストライキ
    が思い当る方が多いのではないかと思います。

    ①~③を表わしたものが以下の図1になります。

    [図1]海上輸送の混乱例
    202410topix_2

     

    次から、それぞれの状況を解説していきます。

    ①中東情勢悪化による紅海ルート回避

    紅海ルートは、アジアと欧州北部・地中海をつなぐ重要な航路です。アジア~欧州の海上輸送において、アフリカ大陸を回らない効率的な輸送ルートとなる為、無くてはならない航路になっています。紅海ルート上の「スエズ運河」と「バブ・エル・マンデブ海峡」は、交通、商業、軍事などで大切な地点を表わす「チョークポイント」や「要衝」の1つになっています。

    ◆動向
    2023年10月にイスラエルとハマスの衝突が始まり、同年11月にイエメンの武装組織フーシ派がハマスを支援する形でイスラエルに協力的な国の商船に対し攻撃を始めました。一部の国の商船以外は、このような紅海ルートを避けるようになり、南アフリカの喜望峰を回る迂回ルートを利用する船舶が増加しました。

    [図2]にありますように、2023年12月から「スエズ運河」と「バブ・エル・マンデブ海峡」の通航数が大きく下降し始め、翌年1月からは「喜望峰」の通航数が上昇しています。
    現在も紅海での緊張は続いており、2024年10月15日時点でもその状況に大きな変化は見られません。

    [図2]月ごとの各要衝の通航船舶数

    202410topix_3

    出所:IMF Port Watch「PORT MONITOR」のデータを元に当社が各要衝の日次通航数を集計して作成

     

    ◆対応策
    喜望峰へ迂回する航路により輸送時間が長くなったため、船舶の供給を増やすよう余剰船や新造船の投入などが行われていますが、本船不足や空コンテナ回漕が間に合わない等によりスペース混雑、海上運賃高騰などが発生しています。また、仮にスエズ航行が正常化し通航可能になった場合でも、スケジュール回復にはその時点から数か月程かかる見込みと言われています。

    そのため、対策としては本船動線不安定化には分散化した小単位での出荷、航空輸送への切り替えなどが挙げられます。ただし、直近での航空輸送の切り替えは航空運賃の上昇がありエリアによって楽観的にとらえることは難しい状況です。

     

    ②異常気象による水不足でパナマ運河の船舶通航制限

    パナマ運河は、パナマ共和国にある運河で太平洋と大西洋を結ぶ要衝です。
    アメリカの東海岸と西海岸の海上輸送において、南アメリカ大陸を回らない効率的な輸送を実現する重要な役割を果たしています。また、アメリカ等から日本へ食料/飼料、石炭、液化天然ガスなどを運ぶ重要な航路の1つになっています。

    ◆動向
    船舶を通過させる為の水をパナマ運河に供給しているガトゥン湖が、高温・少雨といったエルニーニョ現象の影響で、貯水量を大幅に低下させたことにより、船舶の通航制限が行われてきました。通過待ちをする多くの貨物船が洋上にひしめきあう様子は一時ニュースでよく見られました。

    [図3]は、パナマ運河の通航予約枠から見た通航制限の状況です。通常時の一日36隻から、3割程度の減少がしばらく続きましたが、ガトゥン湖の水位が回復し、2024年7月22日からはほぼ通常通りに戻っています。

    [図3]パナマ運河の通航予約枠から見た通航制限の状況
     202410topix_4
     
    出所:Panama Canal Authority(パナマ運河庁) 通知NO.A-48-2023およびA-54-2023、NO.A-19-2024より当社作成

    ◆対応策
    降雨により通航制限は解消されましたが、今後、再び異常気象が発生すれば同様の事象が起こる可能性は残ります。いざというときには、分散化した小単位での出荷、輸送モードの変更(陸送や鉄道輸送との組み合わせ、航空輸送)、海上輸送ルートの変更(アフリカや南米大陸の最南端を迂回等)の検討が必要になります。

     

    ③米東海岸の港湾労組による大規模ストライキ

    ◆動向
    2024年9月末で現行の労働協約が期限を迎えるため、国際港湾労働者協会(International Longshoremen’s Association、ILA)と使用者側の米国海洋連合(United States Maritime Alliance、USMX)が新たな協約の労使交渉を行いました。しかし、港湾ターミナル設備自動化の意見対立ならびに賃上げ交渉が難航し、10月1日に米東海岸からメキシコ湾に至る14カ所の港でストライキが決行されました。10月3日にはUSMXによって今後6年間で61.5%の賃上げを行う等の提案がされ、それをILAが受け入れ暫定合意に達し収束しました。
    ストが継続した場合には、以下のような影響が見込まれていました。
     ・東海岸発着航路サービスの休止
     ・運航スケジュール遅延、貨物滞留
     ・スペース逼迫、確保困難
     ・運賃高騰
     ・東海岸の貨物が西海岸へシフトすることで、西海岸発着航路でのスペース混雑と確保困難等

     

    ◆対応策
    ストが終了したとはいえ、東海岸の14カ所で3日間港湾機能が停止した影響は早期の解消が出来ていない様子で、本船スケジュールや内陸鉄道への接続の乱れや、西海岸での混雑などが見られ、今後も動向に注意が必要とされています。 
    また、ストの終了は暫定合意によるものであり、2025年1月15日を期限に労使交渉は継続されます。
    そのため、再びストに突入するのではないかという懸念は払しょく出来ない状況です。
    再度ストに入った場合の対策としては、西海岸やカナダ、メキシコ経由での輸送へ切替え、鉄道もしくはトラックへ積み替えることや、航空輸送への切り替えが考えられます。

     

    ④その他:海上輸送のコンテナ運賃推移

    世界の海上輸送において、アジアから欧州/米国向けに輸送する貿易量が大きい為、特に港湾コンテナ取扱量の世界ランキング1位の中国・上海から、オランダ・ロッテルダム(同ランキング13位、2023年)やアメリカ・ロサンゼルス/ロング・ビーチ(同ランキング9位、2023年)へ輸送する海上運賃が注目されています。

    英調査会社ドゥルーリーが公表している「World Container Index」の上海発 欧州/北米向け海上コンテナ運賃(US$/40ft、スポット運賃)の推移を見ますと、2023年の12月から急上昇し、1、2月は高止まり、そのあと下落するも5月に急上昇し、7月で高止まり、8月から減少、9月に急降下といった様子が見られました。10月24日時点でも下降が続いていますが、前年同期の水準には下がっておらず前年比ではいまだ2~3倍ほどの高水準の運賃となっています。

    なお、海上運賃の下落は、需要のピークシーズンが例年より前倒しになったこと、中国経済の動向がよくないこと、船舶供給の傾向があること等が要因と推測されます。
    一方で、船社による船舶供給調整や値上げ、中国の春節(旧正月)期間の工場休止に対応するための需要増等で海上運賃が上がることも予想されますので、引き続き注意が必要です。

    ※参考 コンテナ運賃の種類
    契約運賃:船会社と荷主・フォワーダー間で輸送数量等の中長期契約をおこない、定額運賃を定めたもの。
    スポット運賃:需給バランスで都度変更する運賃で、運賃トレンドを確認するソースとして認知されているもの。

     

    航空輸送動向

    海上輸送の混乱で大きな影響を受けている輸送モードといえば航空輸送となります。
    先述のとおり、海上輸送の代替えとして航空輸送へのシフトが増えています。そのほか、アジア発・欧米向けの越境EC貨物や衣料品などが増えておりスペース混雑ならびに運賃高騰の傾向にあります。
    ここではそうした航空輸送の状況を、アジア発市況の切り口からお伝えします。

    その前に航空輸送に欠かせない用語について先に説明します。
    それは「TC1、TC2、TC3」です。

    国際航空運送協会(International Air Transport Association、IATA)は世界を3つの地域TC1、TC2、TC3に区分しています。この地域区分は、航空会社の協定や航空運賃の設定などで使われています。

    ティシ―ワン、ティシーツー、ティシースリーと読みます。

    [図4]IATA地域区分
    202410topix_5

    この地域区分を用いて航空輸出の市況動向を解説します。

     

    ①アジア発TC1/TC2マーケット環境

    現在、欧米向け航空輸送のスポット運賃が大幅に上昇する傾向にあります。
    理由はスペースの混雑ですが、背景がいくつかありますのでご紹介します(図5ご参照)。

    [背景1]アジア発、欧米向け航空貨物の需要増加

    中国発の越境EC貨物
    南・東南アジア発の衣料品・家電製品(直行便のほか経由の貨物も増加)

    📝このことが日本にも波及し、日本発のスペース確保を困難にしています。
    日本を経由する貨物もあり、日本発のスペースを圧迫、また日本発スペースが外地発の高収益貨物と競合し買い負ける状況となっています。
    航空会社も日本発よりも貨物需要と高収益が見込めるアジア発路線を優先することがあり、日本発の供給スペースが減少しています(例:2024年6月、エアフランスは日本での貨物機の運航から撤退)。

    [背景2]船便の乱れによる航空輸送へのシフト

    北米・中南米:慢性的な港湾混雑、北米東海岸港湾ストライキ後の混乱
    欧州:コンテナ船の紅海ルート回避

    [背景3]許容搭載重量(Allowance Cabin Load、ACL)の減少

    許容搭載重量(Allowance Cabin Load、ACL)とは、航空機の客室および貨物室に搭載可能な最大重量です。搭載優先順位は、旅客>旅客の荷物>郵便物>貨物となっていますので、航空機を安全に運航するために搭載重量を調整する必要がある場合、「貨物」から搭載されなくなります。
    現在、以下のような搭載重量を調整する要因があり、ACLが低下しています。
     ・インバウンド需要増加(乗客と預け荷物の増加)
     ・ロシア上空を迂回するルート運航(飛行距離が長くなり燃料を多く搭載)、など

    [図5]航空輸出の市況動向まとめ
    202410topix_6_

     

    ②日本発TC3マーケット環境

    中国等に向けた物量は好調ですがスペース混雑が発生するほどではなく、運賃水準は大きく変動しない見込みです。しかし、一部仕向け地(特にインド向け)においては、スペースが混雑傾向にあり、運賃は値上がりとなる見込みですので注意が必要です。

     

    以上、ここまで国際輸送の現在地についてお届けしました。

    情勢不安、産業政策、異常気象など様々な事象の影響を受ける国際輸送について、引き続き注視して情報をお届けしていきたいと思います。

    お読みいただきありがとうございました。
    (執筆は2024/10/29時点で、情報は変わる可能性があります)

     

    さて、ここからは、国際輸送に関連した当社の物流事業をご紹介します。

    当社関連サービスのご紹介

      

    当社のフォワーディング事業について紹介します。

    海上輸送事業

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    ベースカーゴを活用した仕入力で、高付加価値で競争力ある海上フォワーディングサービスをご提案します。
    <サービス内容>
    ・利用運送事業者として船会社を利用して貨物運送を行います。
    ・国土交通省より認可を得た第2種貨物利用運送事業者として、トラックによる集配から海外での配送までドア・ツー・ドアで一貫した国際物流サービスをご提供します。
    ・国内拠点としては京浜港、阪神港をはじめその他地方港でお取り扱いしております。
    <出荷先>
     世界39か国、124港
    <利用船会社>
     71社
    <当社が保有する資格>
    ・貨物利用運送事業外航海運(1991年 第一種取得、2003年 第二種取得)
     ※NVOCC(Non-Vessel-Operating Common Carrier ):非船舶運航業者
    ・届出荷送人(2016年取得)
     ※SOLAS条約、船舶安全法に基づき自ら国際海上コンテナの総重量を確定させる資格
    ・FMC(Federal Maritime COMMISSION) Registered NVOCC(2021年登録)

     

    航空輸送事業

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    NXグループとのシナジー創出で、高付加価値で競争力ある航空フォワーディングサービスをご提案します。
    <サービス内容>
    ・利用運送事業者として航空機を運航する航空会社を利用して貨物運送を行います。
    ・国土交通省より認可を得た第2種貨物利用運送事業者として、トラックによる集配から海外での配送までドア・ツー・ドアで一貫した国際物流サービスをご提供します。
    ・国内拠点としては東京(成田、羽田)をはじめ関西、九州でお取り扱いしております。
    <出荷先>
     世界69か国、127空港
    <利用航空会社>
     53社(2022年実績)
    <当社が保有する資格>
    ・IATA公認貨物代理店資格(1989年取得)
    ・第二種貨物利用運送事業(混載事業)(1993年取得)
    ・特定航空貨物利用運送事業者および特定航空運送代理店業者(航空保安)(2006年取得)

    このほか、様々なソリューション・事例がございますので、ご興味がありましたらお気軽に当社営業、または当WEBサイトの「お問合せ」よりご連絡いただけましたら幸いです。

     

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