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物流統括管理者(CLO)の選任の義務化 ―検討が進む業務範囲や設置基準とは?―
物流の2024年問題を解消するため、政府や関連省庁、民間企業でも様々な動きが起きています。2023年からガイドラインや政策パッケージ等が次々と示されてきましたが、大きな変化の1つは物流関連二法の法改正です。
参考)関連ブログ:日本政府の物流革新に向けた取り組みー2024年問題対応への政策ポイントー
その中には規制的措置の1つとして「物流統括管理者(CLO*)の選任」があり、既に一部の民間企業では、物流統括管理者(CLO)の選任に向け準備が進められています。
*CLO:Chief Logistics Officerの略
今回のニュースレターでは、物流統括管理者(CLO)について、現在、関連省庁等で検討されている業務範囲や設置基準についてお届けします。お時間がありましたらぜひお読みください。
物流統括管理者(CLO)とは?
2024年5月15日に「流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律及び貨物自動車運送事業法の一部を改正する法律」(以下、改正物効法)が公布されました。改正物効法では、特定事業者のうち、荷主・連鎖化事業者には物流統括管理者(CLO)の選任を義務付けしています。
物流統括管理者(CLO)の選任は改正物効法での規制的措置にあたります。この規制的措置では、事業者全般にかかる措置を公布後1年以内に、特定事業者にかかる措置を公布後2年以内に、それぞれ施行することとしています。このため、特定事業者にかかる措置にあたる「物流統括管理者(CLO)の選任」は、2026年度以降に施行されると想定されます。
参考)改正物効法関連の今後のスケジュール(想定)
▶2024年5月15日 法律公布
▶2025年度~ 法律の施行①
-基本方針
-荷主・物流事業者の努力義務・判断基準
-判断基準に関する調査・公表 等
▶2026年度~ 法律の施行②
-特定事業者の指定
-中長期計画の提出・定期報告
-物流統括管理者(CLO)の選任 等
出所:経済産業省「第1回 産業構造審議会 商務流通情報分科会 流通小委員会・交通政策審議会 交通体系分科会 物流部会・食料・農業・農村政策審議会 食料産業部会 物流小委員会 合同会議」を加工して作成(https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/shomu_ryutsu/distribution/001.html)を加工して作成
物流統括管理者(CLO)は、特定荷主が行う事業運営上の重要な決定に参画する管理的地位にある者をもって充てなければならないとされています。
業務内容は、
- 中長期計画の作成
- ドライバーの負荷低減と輸送される物資のトラックへの過度の集中を是正するための事業運営方針の作成と事業管理体制の整備
- その他ドライバーの運送・荷役等の効率化のために必要な業務
とされており、その具体的な業務内容については検討が必要なため、改正物効法の荷主・物流事業者等に対する規制的措置の施行に向けた検討を行うべく、国土交通省、経済産業省及び農林水産省は合同会議を開催し議論が進められています。
合同会議は2024年6月、8月の2回開催されており、「取りまとめ素案」の中で物流統括管理者(CLO)の業務内容については、以下の通りまとめられています。
※取りまとめ素案は、委員の意見及び業界団体の意見を反映して現時点のたたき台として作成したものであり、今後の検討に応じた変更が予定されているものであるとされています。
<取りまとめ素案(現時点でのたたき台)>
物流統括管理者は、事業運営上の重要な決定に参画する管理的地位にある者であり、改正物効法に基づく義務等に対して全社的な責任を持って対応する必要があることから、「その他ドライバーの運送・荷役等の効率化のために必要な業務」に関しては、以下の業務を規定する必要がある。
・ 定期報告の作成
・ 貨物運送の委託・受渡しの状況に関する国からの報告徴収に対する当該報告の作成
・ 事業運営上の重要な決定に参画する立場から、社内の関係部門(物流・調達・販売等) 間の連携体制の構築
・ トラックドライバーの運送・荷役等の効率化のための設備投資、デジタル化、物流標準化に向けた事業計画の作成、実施及び評価
・ トラックドライバーの運送・荷役等の効率化に関する職員の意識向上に向けた社内研修等の実施
上記に加え、フィジカルインターネットの実現に向けた水平連携や垂直連携の推進のためには、他の荷主や物流事業者をはじめとする様々な関係者と連携しながら、商慣行の見直しやオペレーションの調整、物流標準化などに取り組む必要があることから、以下の業務も規定する必要がある。
・物資の保管・輸送の最適化に向けた物流効率化のための取引の相手方の物流統括管理者 等の関係者との連携・調整
その他、物流統括管理者の役職、役割について以下が検討されている。
・ 物流統括管理者は、自社における物資の流通全体を統括管理する者として上記の業務を行う者であることから、基本として、役員・執行役員等の経営者層から選任されることが必要である。
・また、物流統括管理者は、物流改善に向けた現状の把握や分析等に当たって、デジタル技 術を効果的かつ効率的に活用し、業務を行うことが望ましい。
出所:経済産業省「第2回 産業構造審議会 商務流通情報分科会 流通小委員会・交通政策審議会 交通体系分科会 物流部会・食料・農業・農村政策審議会 食料産業部会 物流小委員会 合同会議」を加工して作成(https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/shomu_ryutsu/distribution/002.html)を加工して作成
物流統括管理者(CLO)の選任が必要な特定事業者とは?
改正物効法では、一定規模以上の事業者を「特定事業者」として指定しています。特定事業者のうち荷主・連鎖化事業者(フランチャイズ)に物流統括管理者(CLO)選任を義務付けています。
この特定事業者の基準案についても、上述の合同会議の中で特定事業者の種類ごとに、指定基準値、算定方法等の案が提示されています。
この中で指定基準値は、特定荷主、特定連鎖化事業者(フランチャイズ)ともに年間の取扱貨物の重量が9万トン以上とされており、該当は上位3,200社程度と想定されています。
※1:事業者としての全体の取扱い貨物の重量ではなく、第一種荷主、第二種荷主、連鎖化事業者それぞれの立場での取扱貨物の重量を指す。
※2:当該連鎖化事業者の連鎖対象者が貨物自動車運送事業者又は貨物利用運送事業者に運送を委託するもの並びに当該連鎖化事業者が連鎖対象者との定型的な約款による契約に基づき受渡しの日又は時刻及び時間帯を運転者に指示することができない貨物を除く。
出所:経済産業省「第2回 産業構造審議会 商務流通情報分科会 流通小委員会・交通政策審議会 交通体系分科会 物流部会・食料・農業・農村政策審議会 食料産業部会 物流小委員会 合同会議」(https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/shomu_ryutsu/distribution/002.html) を加工して作成
この指定基準値について、軽い重量の貨物を取り扱う発荷主となる業種や、卸売業、小売業などの着荷主となるケースが多い特殊性を有する業種においては、重量を把握することに多大なコストがかかることが想定されるため、取扱貨物の重量算定方法については手段を1つに限定せず、複数の選択肢を提示し、それぞれの事業者において合理的な算定方法を選択することとしてはどうかという案が示されました。
今後の検討の進め方(想定)として、第3回と第4回の合同会議の中で取りまとめ案とパブリックコメントが実施され、2024年冬頃を目処に政省令等の案が作成される予定です。
荷主企業の取り組み状況
既に物流統括管理者(CLO)の選任に取り組んでいる荷主企業もあり、「物流革新に向けた政策パッケージ」に基づき、「物流の適正化・生産性向上に向けた荷主事業者・物流事業者の取組に関するガイドライン」の遵守状況について、フォローアップ調査が実施されており、その取り組み状況が報告されました。回答数は発荷主、着荷主あわせて2,106社で、そのうち発荷主、着荷主ともに約3割弱の企業が「対応済み」と回答していることが分かりました。また、「対応に向けて社内調整中」と回答した企業は発荷主・着荷主ともに約2割となりました。以下が、取組状況の回答結果となります。
○ 「物流革新に向けた政策パッケージ」(令和5年6月2日関係閣僚会議決定)に基づき、「物流の適正化・生産性向上に向けた荷主事業者・物流事業者の取組に関するガイドライン」の遵守状況について、フォローアップ調査実施結果
期間:2024(令和6)年2月20日~3月8日 回答数:発荷主1,356社、着荷主750社、物流事業者73社
<物流統括管理者(CLO)の選定の取り組み状況>
出所:内閣官房「第5回 我が国の物流の革新に関する関係閣僚会議」(https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/buturyu_kakushin/index.html) を加工して作成
以上、ここまで物流統括管理者(CLO)の選任に関してお届けしました。
(執筆は2024/9/26時点で、情報は変わる可能性があります)
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