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中東情勢緊迫による海運・航空への影響

目次

    中東情勢緊迫による海運・航空への影響

    ※本情報について、情勢は極めて流動的であるため、実際の状況と異なる場合があることをあらかじめご了承ください。

     2026年2月28日にアメリカとイスラエルがイランに対し軍事攻撃を実施したことにより、中東情勢は緊迫しています。国際輸送ルートが使えなくなり、原油価格、さらには我々の生活や企業のサプライチェーンへの影響の可能性もあり、世界経済のリスクにもなります。
    今回は、中東情勢の緊迫による国際輸送(海運、航空)への影響を解説していきます。
    お時間のある際に、ぜひご覧ください。 
     
     

    中東情勢とホルムズ海峡封鎖の概況

    2月28日にアメリカとイスラエルがイランに対し軍事攻撃を実施したことにより、中東情勢は緊迫しています。
    イラン革命防衛隊はホルムズ海峡を通過する船舶を攻撃するとの警告を出し、一部の国の船舶は通過しているとの情報はあるものの、事実上、ホルムズ海峡は通航が停止状態となりました。
    [図1]で2026年2月1日から3月14日までホルムズ海峡の1週間ごとの通航数をまとめました。
    軍事攻撃の発生後、3月1日からの通航数は大きく減少していることが分かります。

    [図1]週ごとのホルムズ海峡の通航船舶数
    202603topix_01

    出所:IMF Port Watch「PORT MONITOR」のデータを元に各要衝の日次通航数を集計して当社が作成
    (https://portwatch.imf.org/)

     

    中東情勢悪化による日本への影響

    ホルムズ海峡は周辺にサウジアラビア、アラブ首長国連邦、イランなど産油国があり、ペルシャ湾とオマーン湾を結びインド洋へとつなぐ、エネルギー輸送の要衝です[図2]。

    [図2]ホルムズ海峡周辺の地図
    202603topix_02

     

    今回のホルムズ海峡の通航停止状態により、原油供給の懸念が生じています。ホルムズ海峡を通って輸送される原油は、世界の原油供給の約2割に当たるとされており、ホルムズ海峡は世界の原油輸送における重要ルートと言えます。
    [図3]は日本の原油輸入先の割合となります。日本においても、原油は中東依存度が非常に高く約9割を超えています。
    他方で、原油と並べられることの多いLNGについて、[図4]はLNG輸入先の割合になりますが、原油と比較して調達先の多角化が進み、中東依存度は約1割となっていることが分かります。

    [図3]日本の原油輸入先の割合
    202603topix_03

    [図4]日本のLNG輸入先の割合
    202603topix_04

    出所:経済産業省エネルギー庁「イラン情勢等を踏まえた資源エネルギー庁の対応について」をもとに当社作成(https://www.enecho.meti.go.jp/category/others/energysecurity/index.html)

    また、中東情勢の緊迫化に伴う原油価格の急騰は、私たちの生活に関係があるガソリン価格にも影響を及ぼしています。資源エネルギー庁が3月18日に発表した全国のレギュラーガソリン平均価格(16日時点)は1リットルあたり190円80銭となり1990年8月の調査開始以来の史上最高値となりました。これは、前週より29円高い数値となります。日本政府はガソリン補助金の再開を決定し、価格の緩和に動いています。

    原油供給の懸念が続く中、さらに、ナフサの供給不安も高まっています。
    経済産業省のデータ(2024年)によると、日本のナフサ調達先は、中東(アラブ首長国連邦、クウェート、カタール等)が44.6%、国産が39.4%、その他地域が16.0%となっており、中東情勢の影響を受ける構造となっています。
    [図5]に示す通り、原油精製の副産物であるナフサを原料とする製品は幅広くあり、ポリエチレン等の汎用品から半導体素材等の最先端素材まで、自動車や医療といった幅広い産業を支える重要な原料です。そのため、ナフサが調達難となると、減産や生産停止等大きな影響が生じる恐れがあります。

    [図5] ナフサを原料とするサプライチェーン
    202603topix_05

    出所:経済産業省「化学産業の現状と課題」資料(https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/seizo_sangyo/pdf/010_04_00.pdf)を一部加工して当社作成

    中東情勢緊迫による影響は、海運、航空においても発生しています。続いては、海運と航空への影響に関しまとめました。

    海運/航空への影響

     
    ① 海運への影響

    アメリカ、イスラエルによるイランへの攻撃後、ペルシャ湾内に停泊する船舶、ペルシャ湾へ向けて航行予定もホルムズ海峡を通航できずに周辺に停泊する船舶が発生しました。
    一部の国の船舶がホルムズ海峡を通過したという情報もありますが、先述の通り、通航量は限定的です。
    以下に発生し得る影響についてまとめました(一部は、既に発生しています)。


    ・中東発着貨物の新規ブッキングの一時停止・受付制限

    ・スケジュール遅延、ETA(到着予定日)/ETD(出発予定日)の不安定化

    ・Emergency Fuel Surcharge(緊急燃料サーチャージ)の導入・引き上げ

    ・War Risk Surcharge(戦争リスクサーチャージ)の導入・強化

    ・船舶戦争保険の除外水域拡大、保険料上昇

    ・中東エリア港湾への寄港回避から代替港、中継港への貨物集中による港湾混雑

    ・コンテナ滞留、港湾のスペース不足、空コンテナ偏在

    ・南アジア・東南アジアでの運賃上昇の可能性(既に4月以降のレートは上がるかサーチャージ徴収の動きあり)


    ② 航空への影響
    アメリカ、イスラエルによるイランへの攻撃後、中東情勢の悪化に伴い、中東のHUB空港は閉鎖され、飛行ルートが変更となるなど、旅客、国際貨物輸送ともに影響の範囲は広く、混乱が生じました。

    以下に、発生し得る影響についてまとめました(一部は既に発生しています)。


    ・原油価格、ジェット燃料価格の高騰による航空運賃および燃油サーチャージの上昇見込
    燃油サーチャージは、一か月間のシンガポールケロシン平均価格を指標としており、翌々月に改定料金が適用されます。2月28日のアメリカ・イスラエルのイラン攻撃以降、シンガポールケロシン価格が急騰しているため、3月のシンガポールケロシンの平均価格が反映される5月適用の燃油サーチャージ分より大幅に上昇する可能性があります。

    ・ロシア上空の航行制限や中東ルート回避により、迂回航路の利用による燃油積み増しが発生し、航空機への積載可能総重量(ACL)がさらに制限される可能性

    ・欧州向けは、ロシア上空の航行制限や中東経由ルート回避のため、代替ルートとして北米経由へシフトする動きがあり、航空運賃の上昇とリードタイム延伸の可能性

    ・中東路線の旅客機などの運休や欠航によるスペース供給減少
    上記の運休や欠航の背景として、①運航面では領空制限や着地空港閉鎖等による欠航・運休②コスト面では燃油価格急騰に伴う収支悪化による減便・運休③需要面で旅客数減少を起因とした減便・運休があります。


    ※後述のフォワーディングニュース(航空輸送)で、仕向地(エリア)別の情報を掲載しています

    今回は、「中東情勢緊迫による海運・航空への影響」をお伝えしました。
    中東情勢の緊迫化が続く中、海運や航空など物流への影響が生じています。また、企業活動においても原油等の価格急騰や調達難により、輸送コストの増加、さらには輸送日数の増加や滞留リスクを考慮した在庫管理の調整、減産や生産停止など影響があり、柔軟なサプライチェーンの構築の重要性が高まっているかと思います。

    (執筆は2026/3/23時点で、情報は更新される可能性がございます)

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