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Nittsu NEC Logistics News Letter
2024年9月号

INDEX

   

物流統括管理者(CLO)の選任の義務化 ―検討が進む業務範囲や設置基準とは?―

物流の2024年問題を解消するため、政府や関連省庁、民間企業でも様々な動きが起きています。2023年からガイドラインや政策パッケージ等が次々と示されてきましたが、大きな変化の1つは物流関連二法の法改正です。
参考)関連ブログ:日本政府の物流革新に向けた取り組みー2024年問題対応への政策ポイントー

その中には規制的措置の1つとして「物流統括管理者(CLO*)の選任」があり、既に一部の民間企業では、物流統括管理者(CLO)の選任に向け準備が進められています。
*CLO:Chief Logistics Officerの略

今回のニュースレターでは、物流統括管理者(CLO)について、現在、関連省庁等で検討されている業務範囲や設置基準についてお届けします。お時間がありましたらぜひお読みください。

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(1) 物流統括管理者(CLO)とは?

2024年5月15日に「流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律及び貨物自動車運送事業法の一部を改正する法律」(以下、改正物効法)が公布されました。改正物効法では、特定事業者のうち、荷主・連鎖化事業者には物流統括管理者(CLO)の選任を義務付けしています。

物流統括管理者(CLO)の選任は改正物効法での規制的措置にあたります。この規制的措置では、事業者全般にかかる措置を公布後1年以内に、特定事業者にかかる措置を公布後2年以内に、それぞれ施行することとしています。このため、特定事業者にかかる措置にあたる「物流統括管理者(CLO)の選任」は、2026年度以降に施行されると想定されます。

参考)改正物効法関連の今後のスケジュール(想定)

 ▶2024年5月15日   法律公布

 ▶2025年度~    法律の施行①
            -基本方針
            -荷主・物流事業者の努力義務・判断基準
            -判断基準に関する調査・公表      等

 ▶2026年度~    法律の施行②
            -特定事業者の指定
            -中長期計画の提出・定期報告
            -物流統括管理者(CLO)の選任      等

出所:経済産業省「第1回 産業構造審議会 商務流通情報分科会 流通小委員会・交通政策審議会 交通体系分科会 物流部会・食料・農業・農村政策審議会 食料産業部会 物流小委員会 合同会議」を加工して作成(https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/shomu_ryutsu/distribution/001.html)を加工して作成

 

では、物流統括管理者(CLO)の業務範囲についてはどのようになるのでしょうか。
物流統括管理者(CLO)は、特定荷主が行う事業運営上の重要な決定に参画する管理的地位にある者をもって充てなければならないとされています。
業務内容は、
  • 中長期計画の作成
  • ドライバーの負荷低減と輸送される物資のトラックへの過度の集中を是正するための事業運営方針の作成と事業管理体制の整備
  • その他ドライバーの運送・荷役等の効率化のために必要な業務

とされており、その具体的な業務内容については検討が必要なため、改正物効法の荷主・物流事業者等に対する規制的措置の施行に向けた検討を行うべく、国土交通省、経済産業省及び農林水産省は合同会議を開催し議論が進められています。

合同会議は2024年6月、8月の2回開催されており、「取りまとめ素案」の中で物流統括管理者(CLO)の業務内容については、以下の通りまとめられています。
※取りまとめ素案は、委員の意見及び業界団体の意見を反映して現時点のたたき台として作成したものであり、今後の検討に応じた変更が予定されているものであるとされています。


<取りまとめ素案(現時点でのたたき台)>

物流統括管理者は、事業運営上の重要な決定に参画する管理的地位にある者であり、改正物効法に基づく義務等に対して全社的な責任を持って対応する必要があることから、「その他ドライバーの運送・荷役等の効率化のために必要な業務」に関しては、以下の業務を規定する必要がある。

・ 定期報告の作成
・ 貨物運送の委託・受渡しの状況に関する国からの報告徴収に対する当該報告の作成
・ 事業運営上の重要な決定に参画する立場から、社内の関係部門(物流・調達・販売等) 間の連携体制の構築
・ トラックドライバーの運送・荷役等の効率化のための設備投資、デジタル化、物流標準化に向けた事業計画の作成、実施及び評価
・ トラックドライバーの運送・荷役等の効率化に関する職員の意識向上に向けた社内研修等の実施

上記に加え、フィジカルインターネットの実現に向けた水平連携や垂直連携の推進のためには、他の荷主や物流事業者をはじめとする様々な関係者と連携しながら、商慣行の見直しやオペレーションの調整、物流標準化などに取り組む必要があることから、以下の業務も規定する必要がある。
・物資の保管・輸送の最適化に向けた物流効率化のための取引の相手方の物流統括管理者 等の関係者との連携・調整

その他、物流統括管理者の役職、役割について以下が検討されている。
・ 物流統括管理者は、自社における物資の流通全体を統括管理する者として上記の業務を行う者であることから、基本として、役員・執行役員等の経営者層から選任されることが必要である。
・また、物流統括管理者は、物流改善に向けた現状の把握や分析等に当たって、デジタル技 術を効果的かつ効率的に活用し、業務を行うことが望ましい


出所:経済産業省「第2回 産業構造審議会 商務流通情報分科会 流通小委員会・交通政策審議会 交通体系分科会 物流部会・食料・農業・農村政策審議会 食料産業部会 物流小委員会 合同会議」を加工して作成(https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/shomu_ryutsu/distribution/002.html)を加工して作成

 

(2) 物流統括管理者(CLO)の選任が必要な特定事業者とは?

改正物効法では、一定規模以上の事業者を「特定事業者」として指定しています。特定事業者のうち荷主・連鎖化事業者(フランチャイズ)に物流統括管理者(CLO)選任を義務付けています。
この特定事業者の基準案についても、上述の合同会議の中で特定事業者の種類ごとに、指定基準値、算定方法等の案が提示されています。
この中で指定基準値は、特定荷主、特定連鎖化事業者(フランチャイズ)ともに年間の取扱貨物の重量が9万トン以上とされており、該当は上位3,200社程度と想定されています。

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※1:事業者としての全体の取扱い貨物の重量ではなく、第一種荷主、第二種荷主、連鎖化事業者それぞれの立場での取扱貨物の重量を指す。
※2:当該連鎖化事業者の連鎖対象者が貨物自動車運送事業者又は貨物利用運送事業者に運送を委託するもの並びに当該連鎖化事業者が連鎖対象者との定型的な約款による契約に基づき受渡しの日又は時刻及び時間帯を運転者に指示することができない貨物を除く。

出所:経済産業省「第2回 産業構造審議会 商務流通情報分科会 流通小委員会・交通政策審議会 交通体系分科会 物流部会・食料・農業・農村政策審議会 食料産業部会 物流小委員会 合同会議」(https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/shomu_ryutsu/distribution/002.html) を加工して作成

 

この指定基準値について、軽い重量の貨物を取り扱う発荷主となる業種や、卸売業、小売業などの着荷主となるケースが多い特殊性を有する業種においては、重量を把握することに多大なコストがかかることが想定されるため、取扱貨物の重量算定方法については手段を1つに限定せず、複数の選択肢を提示し、それぞれの事業者において合理的な算定方法を選択することとしてはどうかという案が示されました。

今後の検討の進め方(想定)として、第3回と第4回の合同会議の中で取りまとめ案とパブリックコメントが実施され、2024年冬頃を目処に政省令等の案が作成される予定です。

(3)荷主企業の取り組み状況

既に物流統括管理者(CLO)の選任に取り組んでいる荷主企業もあり、「物流革新に向けた政策パッケージ」に基づき、「物流の適正化・生産性向上に向けた荷主事業者・物流事業者の取組に関するガイドライン」の遵守状況について、フォローアップ調査が実施されており、その取り組み状況が報告されました。回答数は発荷主、着荷主あわせて2,106社で、そのうち発荷主、着荷主ともに約3割弱の企業が「対応済み」と回答していることが分かりました。また、「対応に向けて社内調整中」と回答した企業は発荷主・着荷主ともに約2割となりました。以下が、取組状況の回答結果となります。

○ 「物流革新に向けた政策パッケージ」(令和5年6月2日関係閣僚会議決定)に基づき、「物流の適正化・生産性向上に向けた荷主事業者・物流事業者の取組に関するガイドライン」の遵守状況について、フォローアップ調査実施結果
期間:2024(令和6)年2月20日~3月8日 回答数:発荷主1,356社、着荷主750社、物流事業者73社

<物流統括管理者(CLO)の選定の取り組み状況>

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出所:内閣官房「第5回 我が国の物流の革新に関する関係閣僚会議」(https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/buturyu_kakushin/index.html) を加工して作成

(執筆は2024/9/24時点で、情報は変わる可能性があります)

以上、ここまで物流統括管理者(CLO)の選任に関してお届けしました。
ここからは、当社のコンサルティングソリューションサービスをご紹介します。

当社関連サービスのご紹介

当社のコンサルティングソリューションは、NECの物流子会社として長年培ってきた電機精密物流のノウハウを元に、お客様の物流改革を支援します。

コンサルティングメニューには「物流統括管理者(CLO)アドバイザリー」があり、以下を提供します。

202409service_1・物流マネージメントコンサル:
 物流リソース現状の可視化/定量化による課題の洗い出しと解決策(改革のテーマ検討)
 物流リソースの最適配置の検討支援
・物流面における環境への取り組み、環境と物流の課題整理
・物流に関連したKGI/KPI設定の支援

ご興味がありましたらお気軽に当社営業、または当社WEBサイトの「お問合せ」よりご連絡いただけましたら幸いです。

フォワーディングニュース(航空輸送)

米国向け

・アジア発貨物需要増の影響を受け、日本発スペースは高単価なアジア発貨物で非常に混雑しており、スポットレートは高騰、追加のスペース購買が厳しい状況が続いています。10月以降の北米向け運賃は全般的に大幅上昇の見通しです。
・9月は北米西岸向け海上スペースが非常にタイトな為、海上輸送から航空輸送への切り替え案件が増えることが見込まれます。加えて、北米東岸労使交渉・カナダ鉄道ストライキ次第では、航空輸送需要が更に増えることが想定される為、動向に注視が必要です。

欧州向け

・北米発同様に高単価なアジア発貨物を優先する形でスペースが埋まっていく事から、相対的に運賃単価が低い日本発欧州向けスペースは限定的となり、スペース混雑・スポットレート高騰といった状況が継続中です。10月以降欧州向け運賃も全般的に大幅上昇の見通しです。
・イスラエルとハマスの軍事衝突に伴い、中東情勢に再び緊張感が走っています。中東上空を避けて運航する航空会社や、中東路線を一時的に見合わせる航空会社も出てきており、引き続き注視が必要です。

東アジア向け

・他エリアと比較すると海上運賃の上昇や、スペース逼迫は現時点で見られません。
通常品のスペース確保は比較的スムーズな状況。仕向地別の半導体装置関連の出荷は、台湾向けが好調、中国向けは国慶節前の出荷増加が見込まれます。

南アジア向け

・海上輸送の混雑・乱れによる、航空輸送への切り替え案件は落ち着いたものの、自動車・建機関連、電子電機関連等で一部SPOT出荷が増えてきています。ピークシーズンに向け、スペースには注意が必要です。

フォワーディングニュース(海上輸送:マーケット状況)

直近の海運動向

英調査会社ドゥルーリーが9月5日に公表したコンテナ船運賃指標によると、総合指標は前週比8%減となり、7週連続の下落です。特に欧州向けや地中海向けの大幅減が響いています。5日付の上海発ロッテルダム向けの運賃水準は前週比14%減です。
国慶節前の中国発の貨物ラッシュが例年より大幅に減少していることに加え、今年はピークシーズンが早めに始まったため、荷動きが落ち込むのも早い可能性があります。
一方で、米国向けに関しては、東岸の港湾ストライキが懸念されており、9月末の期限までに妥結しないと西岸へのシフトが進むものと見られ、西岸の混雑の可能性も深まっています。

※北米東岸の港湾労使交渉について
・北米東岸・ガルフ港湾労働組合と雇用主同盟の労働協約が2024年9月30日をもって期限切れとなります。
・2024年10月からの6年契約に関する交渉が難航しており、交渉の争点は自動化です。
・Mobile港(アラバマ州)での自動化ゲート導入が現行協約を無視したものと組合が反発し、交渉の中止を表明しました。
・スローダウン、ストライキ、ロックアウトの可能性が高まっています。

海運マーケットの主なポイント

・7月のアジア発米国向けのコンテナ荷動きは、前年同月比約19.1%増、10か月連続のプラス。
(日本発は前年同期比14.2%増、中国発は、20.9%増)
・直近では、ドゥルーリーが9月5日に発表のスポット運賃指数では、上海発ロサンゼルス向けが先週比3%減、前年比168%増。
・パナマ運河の1日の航行回数は、予定通り、9月から現在の34隻から通常の36隻へと回復予定。
・6月のアジア発欧州向けの荷動きは、前年同期比で8%増で16ヶ月連続のプラス。
・ドゥルーリーが9月5日に発表のスポット運賃指数では、上海発ロッテルダム向けが先週比14%減、前年比329%増。
・アジア域内の6月の荷動きは、前年同期比4.5%増、日本発中国の荷動きは、前年同月比2.3%減。 
 中国発日本向け荷動きは、前年同月比3.4%減。

※参考 コンテナ運賃の種類
 契約運賃:船会社と荷主・フォワーダー間で輸送数量等の中長期契約をおこない、定額運賃を定めたもの。
 スポット運賃:需給バランスで都度変更する運賃で、運賃トレンドを確認するソースとして認知されているもの。

編集後記

今回も当ニュースレターをお読み頂きありがとうございます。

今回は、物流統括管理者(CLO)についてお届けしました。
メルマガ内でもお伝えしましたが、物流統括管理者(CLO)の業務内容や設置基準をどのようにするのかはまだ検討がされている最中で、求められる役割や能力については、関係団体によって提言もされています。
※参考資料
「第1回 産業構造審議会 商務流通情報分科会 流通小委員会・交通政策審議会 交通体系分科会 物流部会・食料・農業・農村政策審議会 食料産業部会 物流小委員会 合同会議の『物流を取り巻く現状と取組状況について』」https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/shomu_ryutsu/distribution/pdf/001_01_00.pdf

また、改正物効法に関連した動きがございましたら、随時お伝えできればと思います。
今後も皆さまのお役に立つ情報をお届けできるよう頑張りますので、引き続き日通NECロジスティクスのニュースレターをよろしくお願いします。

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