目次
サプライチェーンを支える包装改善
~持続可能な成長への貢献~
製品の品質を損なうことなく市場へ届けるために欠かせない包装・梱包。
その費用は物流コスト全体の約5%と言われており、つい改善が後回しになりがちです。
しかし、包装・梱包の見直しは、単なる包装コストの削減にとどまりません。
製品開発から調達・生産・出荷・納品・回収まで、サプライチェーン全体のさまざまな場面で物流コストの改善につながります。
輸送効率の向上や現場作業の効率化、ひいては持続可能な物流の実現、環境保全にも貢献できる重要なポイントです。
今回のニュースレターでは、包装設計や評価試験の活用方法、改善のポイント、具体的な事例について分かりやすく解説します。
ぜひご一読いただき、包装改善の新たな可能性を感じていただければ幸いです。
※当ニュースレターの内容を含めたアーカイブ動画のご案内はこちら
はじめに:包装の役割
✔ 「包装」は、大切な製品を市場へ届けるうえで、製品の価値および状態を保護するために必要な機能です。
まずは、「包装」とは何かについて、基礎的な説明をさせていただきます。
身近な例としては、EC(Electronic Commerce:電子商取引、インターネットを介した商品の売買)が挙げられます。
近年のECの爆発的な発展により、皆さまも段ボールで包装された商品を受け取る機会が日常的になっているのではないでしょうか。
荷物が届いた際、箱がつぶれていたり、水濡れがあったりすると、中の商品が無事かどうか不安になることもあるかと思います。
図1をご覧ください。商品は、皆さまのお手元に届くまでに、さまざまな外力(がいりょく)にさらされています。この外力から商品を守るために「包装」が存在します。包装の基本的な機能は、流通時の外力やさまざまな環境条件から中身の物品を保護し、安全に市場へ届けることです。
[図1]貨物に影響を与える外力図:当社作成
✔ 市場に届ける流通過程において、様々なハザードに遭遇するリスクがあります。
さらに貨物は、流通過程において様々なハザードに遭遇するリスクがあります。ハザードの種類を大きく分けますと、自然発生的要因の物理的・気象的・その他と、人為的要因の規制、商慣行等に分けられます。例えば、物理的ハザードとは、外部からの力が加わることによって生じるリスクを指します。
[図2]主なハザード図:当社作成
包装がこうした環境条件から製品を適切に保護できているかどうかは、振動試験や衝撃試験などの「評価試験」によって判断できます。
安全性を重視しすぎると過剰包装となり、逆に影響を軽視すると破損などのトラブルが多発する可能性があります。
適切な包装を実現するためには、製品が流通する際の環境条件を正確に把握し、実際に遭遇するハザードを再現した試験を行うことが重要です。
また、包装は最終的に廃棄物となるため、適正かつ最小限の包装にして廃棄物を削減することが求められています。
続いて、包装にまつわる規格についてご紹介します。
✔ 包装関係の試験方法には世界で様々な規定があります。
包装に関する試験方法は、世界的に規定されており、主な規格をまとめたものが図3です。
この中の「ISTA」は、国際安全輸送協会による規格で、医療機器や事務機器業界などで広く利用されています。日本国内でISTA認定を受けている試験所は数社のみで、当社もその認定試験所のひとつです。
また、危険物を航空・海上輸送する際には、使用する容器が「UN規格」に適合している必要があります。容器には「舶用品検定協会」の検査を受けて取得したUNマークの表示が義務付けられています。当社は、同協会指定の試験所です。
[図3]包装関係の試験方法が規定されている主な規格(世界)図:当社作成(太字は当社対応実績あり)
評価試験活用のポイント
✔ 評価試験で見るべきポイントはここ!
流通において、ほとんどの製品は規格に基づき製品評価試験や包装評価試験を実施しています。
製品評価試験は、主に製品が使用環境に適した設計になっているかを確認するために行われます。
包装評価試験は、包装材が製品を適切に保護する機能を備えているかを確認するために実施されます。
評価試験で見るべきポイントは、主に、「現状の確認」と「品質事故の原因究明」の2点です。
ここから、それぞれのポイントで使用される代表的な評価試験についてご紹介します。
まずは、「現状の確認」についてです。
現状の段ボール強度が過剰または不足していないかは「圧縮試験」で確認します。
圧縮試験は、包装貨物が輸送や保管時にどの程度積み重ねに耐えられるかを評価する試験です。空容器(段ボール等)の最大圧縮強度や、内容品入り容器に設定荷重を加えて内容物や容器の異常を検査します。
例えば、2段しか積まない運用で4段分の強度の段ボールを使用している場合、過剰包装となり、コスト増につながります。適正な強度を確認することで、余分なコストを抑えることが可能です。
次に、緩衝材の量が過剰または不足していないかを確認するには「落下試験」を行います。
落下試験は、包装貨物が流通過程で受ける衝撃に対して、内容物がどの程度耐えられるかを評価する試験です。一定の高さから包装貨物を床面に落下させ、内容品が受ける衝撃を測定します。
当社では、落下姿勢のばらつきを抑え、再現性を高めたスライドテーブル型落下試験機を使用しています。何度でも、狙った部分を正確に落下させることが可能です。
こちらも、適正な強度を確認し、余分なコストを抑えるために用います。
続いて、「品質事故の原因究明」についてです。
ここでは主に、「振動試験」と「衝撃試験」を用います。
振動試験は、包装貨物が輸送中に受ける振動への耐久性を評価する試験です。
加速度測定により、共振周波数や振動伝達率を確認します。
例えば、輸送中の振動による外装箱の印字の擦れ、製品のネジの緩み、包装資材による製品の圧迫などを確認する際に用いられます。
また、緩衝材の強度や包装資材が輸送中に外れないかどうかも、この試験で確認できます。
衝撃試験は、輸送事故が発生し包装資材に原因がない場合、製品そのものの強度を評価する際に用いられます。
製品が流通過程や使用中に受ける衝撃への耐性を確認し、許容加速度や包装設計の見直しの必要性を判断します。また、製品の最も壊れやすい箇所を調べ、限界値を把握することも可能です。
さらに、大型重量貨物を対象とした「傾斜衝撃試験」もあります。
これは、列車連結時の衝撃やトラックの急発進・急停止時に発生する衝撃を評価する試験です。衝撃を再現し、包装状態や内容品の損傷、衝撃効果を確認します。衝突速度を一定にして繰り返し衝撃を与え、予定された損傷が発生する衝突速度を確認します。
包装設計改善のポイント
✔ たかが包装?されど包装です。包装の役割は製品を外力から守るためだけではないのです。
次に、包装設計の改善ポイントについてご説明します。
分かりやすい例として「箱のサイズダウン」を取り上げます。
図4をご覧ください。箱の大きさを、例えばわずか20ミリ小さくするだけで、保管や輸送効率が大きく向上します。
従来の箱サイズではパレットに余白が生じていた場合でも、箱を小さくすることでパレットに積載できる数が増えます。
これにより、パレット保管の効率が向上し、車両への積載率もアップします。
積載率が向上すれば、1箱あたりの輸送費が低減されるだけでなく、CO2排出量の削減にもつながります。特に海外へのコンテナ輸送では、輸送距離が長いため、さらに大きな効果が期待できます。
[図4]包装のダウンサイジングによる積載率向上による効果図:当社作成
近年、SDGsやESG経営への取り組みは多くの企業で当たり前となっています。
SDGsは17の目標と169のターゲットから構成されており、その中の目標13「気候変動に具体的な対策を」は、物流分野とも深く関わっています。
積載率の向上は、CO2排出量の削減や気候変動の抑制につながります。図5に示すように、積載率が上がることで輸送のトンキロあたりのエネルギー使用原単位が低減し、CO2排出量も減少します。CO2排出量が減れば、地球の気温上昇の抑制につながり、気候変動対策にも貢献できます。
包装改善は、CO2削減に寄与する重要な取り組みのひとつといえます。
[図5]SDGs/ESG経営と物流領域の関わり(一例)図:当社作成
サプライチェーンを支える包装設計・評価試験ソリューション事例
✔ 包装設計、評価試験によるソリューションで製品開発、調達、生産(ライン投入)、出荷、顧客納品までの各シーンでの改善が可能です。
次からはサプライチェーンを支えるソリューション事例をご紹介します。
物流コストに占める包装費の割合は約5%と言われています。わずかな割合ですが、「包装設計の見直し」や「適正な評価試験の実施」によって、製品開発、調達、生産、出荷、納品、回収といったサプライチェーンの各シーンで改善が可能です(図6ご参照)。
[図6]サプライチェーンと包装改善のかかわり図:当社作成
ここからは事例を用いて、いくつか改善内容をご紹介させていただきます。
①調達~生産での改善事例
✔ 工場での荷姿返還を事前に対応することで、工場側の作業効率アップ!
こちらのお客様のお悩みは、多くの国内外部品メーカーからの調達と、工場ラインへの投入時に必要となる荷姿変換作業でした。
部品メーカーごとに独自のケースで納品されるため、お客様の工場では専任の作業者がライン投入用トレーへの入れ替え作業を行っていました。
また、ワンウェイ(使い捨て)の包装資材も多く、廃棄処理にも手間がかかっていました。
当社では、包装改善による以下の提案を行いました。
・ベンダーからライン投入まで同一荷姿に統一し、工場での荷姿変換作業を削減
・個別納品を定時運行のルート便に切り替え、小ロット化を実現し、生産と連動した部材供給を支援
これにより、工場でのライン投入用トレーへの入れ替え作業が不要となり、作業工数の大幅な削減につながりました。また、品質を損なわず繰り返し使用できるケースに変更したことで、包装資材費の低減も実現しました。
結果として、作業コストを80%削減、CO2排出量を72%削減する効果が得られました。
調達物流においては、複数の部品メーカーを回る輸送ルート便の構築を提案し、空箱の返却も効率的に行えるようになりました。
[図7]事例①図:当社作成
②工場出荷での改善事例
✔ 製品設計の段階からお客様と一緒に改善を進めたことで、トータルコストの削減を実現!
あるお客様より、開発中製品の包装設計および評価試験のご依頼をいただき、当社で試験を実施したところ、製品そのものの強度不足が判明しました。
部品を実装した完成品の状態では、路線便輸送時の衝撃に耐えられない可能性がありました。また、部品ごとに個別包装していたため包装資材の点数が多く、保管スペースの増加やトラックへの積載率の低下など、物流コスト増加の要因となっていました。さらに、梱包・開梱作業にも多くの時間を要していました。
当社は、後継機種の開発開始時にお客様と面会する機会を得て、以下の提案を行いました。
・製品の脚部を強化し、部品を実装した状態でも輸送衝撃に耐えられるようにする
・複数の包装資材を1つの箱に収める設計に変更する
この結果、製品単体のコストは増加しましたが、包装資材費・輸送費・保管費を含めたトータルコストを41%削減、CO2排出量も64%削減することができました。
本事例は、製品単体のコストを抑えることだけでなく、包装設計の段階で箱サイズや資材点数を最適化することで、全体のコストバランスを取ることの重要性を示しています。
[図8]事例②図:当社作成
③顧客納品での改善事例
✔ リターナブルボックスで納品先での開梱作業と廃材処理の手間を不要に!
こちらのお客様のお悩みは、納品時に大量の廃棄包装資材(段ボール)が発生することでした。
製品を1台ずつポリ袋に入れ、段ボールで個別包装していたため、廃棄時には分別作業も必要となっていました。
当社は、組み立て式のリターナブルボックスの導入を提案しました。
製品サイズに合わせて設計し、1ボックスあたり9台の製品を格納できる仕様としました。
この結果、廃棄物の削減に加え、製品を1点ずつ開梱する作業時間も大幅に短縮することができました。作業コストは80%削減、包装資材費は78%削減、積載率向上によりCO2排出量も91%削減する効果が得られました。
[図9]事例③図:当社作成
④製品開発での改善事例
当社では、これまでご紹介してきた各シーンでの包装改善を、製品開発段階から検討することが重要だと考えています。繰り返しになりますが、包装は適切なレベルが求められます。
「絶対に壊れない包装」を目指すのではなく、製品の強度や性質、輸送・保管の環境などに合わせて、過不足のない包装設計が必要です。
製品サイズの見直しは多くの企業で取り組まれていますが、製品の「突起」や「へこみ」など、わずかな設計変更によって必要な包装が大きく変わる場合もあります。
包装や開封の作業性、荷扱いの利便性、トラックの積載率などへの影響を複合的に検討することで、トータル物流コストの抑制のみならず、持続可能な物流の実現にもつながります。
機会がありましたら、ぜひ製品設計の段階で包装についてもご検討いただくことをおすすめします。
<製品開発における考慮ポイント>
・製品の価値・状態を保護するために必要な包装レベルの設定
-輸送環境を想定した製品強度の確保 など
・包装や開封の作業性、車両の積載効率の向上
-破損の原因となる突起の削減
-緩衝材を受ける面積の確保 など
まとめ
- 「包装」は、大切な製品を市場へ届ける際に、製品の価値および状態を保護するために不可欠な機能です。
- 外力から守るだけでなく、「包装設計の見直し」や「適正な評価試験の実施」により、製品開発・調達・生産・出荷・納品・回収といったサプライチェーンの各工程で改善が可能です。
- 包装の改善は、物流コストの削減や環境負荷の低減にもつながり、持続可能な成長への貢献となります。
以上、ここまで『サプライチェーンを支える包装改善~持続可能な成長への貢献~』をお届けしました。お読みいただきありがとうございました。
みなさまの物流改善のヒントになりましたら幸いです。
ここからは、当社の包装・梱包ソリューション(設計・評価試験)についてご紹介します。
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