Nittsu NEC Logistics News Letter
2022年9月号
INDEX
- トピックス:CO2排出量削減における鉄道貨物輸送への期待
- 関連物流サービスのご紹介
(鉄道貨物輸送向け振動再現試験サービスのご紹介、輸送サービス事例) - フォワーディングニュース(航空、海上)
- 編集後記
トピックス:CO2排出量削減における鉄道貨物輸送への期待
地球温暖化問題への対策として、世界的にCO2排出量を削減することへの重要性が高まる中、企業の取り組みもここ数年で大きく変わってきています。自社だけでなく、サプライチェーン全体で削減目標を立てる企業も増えています。環境省では、原材料調達・製造・物流・販売・廃棄など、一連の事業活動の流れ全体から発生する温室効果ガス排出量を「サプライチェーン排出量」と定義していて、サプライチェーン全体で削減に取り組むことで、削減チャンスなどが広がるとうたっています。
実際、当社でも荷主様からのCO2排出量データの提出や、削減の取り組み協力を求められることが増えてきています。
今回は、CO2排出量削減につながる物流サービスで効果が大きいと期待される鉄道貨物輸送についてお届けします。
CO2排出量削減につながる鉄道貨物輸送へのモーダルシフト
CO2排出量削減につながる物流サービスとして、トラックや航空以外の輸送モードに転換するモーダルシフトに関心が集まっていて、鉄道による貨物輸送が注目されています。物流業界で懸念されるトラックドライバー不足問題にも、輸送能力がトラックより高い鉄道貨物輸送は、解決の手段の1つになると期待されています。
下の図は、鉄道貨物輸送の主な特性を表した2つのデータです。
CO2排出量や輸送能力において、トラックなどと比較すると、より効率的な輸送手段と言えます。
※国土交通省 鉄道物流を取り巻く現状及び検討会資料より作成

鉄道貨物輸送の現状
鉄道貨物輸送の基礎情報をご紹介します。
大きな期待がある反面、課題もあります。
◇コンテナサイズ
代表的なサイズは12フィートコンテナになります。
JR駅のホームで貨物列車が通過する様子を見かけることがあるかと思いますが、そのほとんどが、この12フィートコンテナです。
そのほか、一部の区間で限定運用されている特殊サイズのコンテナがいくつかありますが、最近増え始めているのが、10トントラックと同等の積載容量をもつ31フィートコンテナです。
鉄道貨物輸送は、ドアtoドアの輸送が出来ず、発地・着地の鉄道駅で別輸送モードからの荷物の積み替えが発生します。大型トラックと同等の31フィートコンテナは、トラック輸送単位と荷役作業を変更しないという大きなメリットがあり、今後のさらなる普及が望まれています。また、一定の温度を保持する定温コンテナも近年ニーズが高まっています。

◇運賃
鉄道輸送のオンレール分と、集荷配送・付帯作業のオフレール分を合算したものが運賃となります。
◇品質
鉄道駅での貨物の積み替えや、レール変更による積み替え時に振動が発生し、振動等に弱い貨物に対し課題があると言われています。
◇リードタイム
災害や鉄道事故発生時の復旧、別輸送モードへの切り替えが容易でないことから、リードタイム延長の許容が求められる、といった課題があります。
◇事業者
走行距離と重量によるトンキロベースで見ると、貨物の鉄道事業はJR貨物が100%に近い割合を占めています。
◇国内貨物輸送における鉄道輸送
トンキロベースでは、輸送モード全体のうち、鉄道は5%程度となります。JR貨物の取り扱い量は、1990年度の268億トンキロをピークに、以降減少傾向となり、2021年度で177億トンキロとなっています。
鉄道貨物輸送のこれから
鉄道貨物輸送の特性である、大量輸送・低環境負荷への期待等から、国としても鉄道貨物を重要な輸送モードと位置づけ、今年3月に、政策のあり方を検討する有識者検討会「今後の鉄道物流の在り方に関する検討会」を設置しています。同年7月には「変化し続ける社会の要請に応える貨物鉄道輸送の実現に向けて」という中間とりまとめを発表しました。
検討会では、鉄道貨物輸送を3つの視点から見た14の課題と今後の取り組みの方向性ということで提言をまとめています。
先述の課題についても対策が記載されていますので、ご興味がありましたらこちらからご覧ください。
国土交通省「鉄道:今後の鉄道物流のあり方に関する検討会」
(https://www.mlit.go.jp/tetudo/tetudo_tk5_000016.html)
次項では、当社の関連物流サービスをご紹介します。
当社の関連物流サービスのご紹介
CO2排出量削減に関連する物流サービス
~まずはモーダルシフトの検討材料が欲しいという企業様へ~
鉄道貨物輸送向け 振動再現試験サービス
気候変動への取り組みとなるCO2排出量削減への対応として、トラックや航空以外の輸送モードに関心が集まり、鉄道による貨物輸送が注目されています。物流業界では、トラックドライバーの高齢化や、2024年度から適用される時間外労働の罰則付き上限規制などにより、深刻なドライバー不足が懸念されていますので、車両1編成の輸送力がトラックより高い鉄道貨物輸送は、ドライバー不足解決を図る手段として期待されています。
当社では、貨物の鉄道輸送を検討される企業様向けに、鉄道貨物輸送の振動再現試験サービスを開始しました。
鉄道輸送における製品損傷の検証のほか、過剰な包装をしていないかを確認することが可能な為、包装材削減といった環境負荷低減にも繋がります。

【本サービスの概要】
・JIS Z 0232:2020に準拠した振動再現試験を提供します。
・データロガーにより実際の輸送波形を取得、そのデータを振動試験機にダイレクトに入力することにより、実際に発生する振動・衝撃を再現することが可能です。
・実際の輸送経路の試験スケジュールを組むことにより、最適な輸送評価試験を提供します。
・また、JIS E 4031:2013を拠り所にした加速試験(レベルアップ-試験時間短縮)を行う事により、評価の効率化を行う事ができます。
【基本システム】
■データロガー
振動・衝撃・落下波形データ記録
■振動試験機
振動盤寸法:1,200×1,200(mm)
最大搭載質量:380kg
■再現データ
トラック輸送(高速道路、一般道)
鉄道貨物輸送(福岡-熊谷間)
※ 随時データを取得、解析中

ご興味のあるお客様は、弊社営業担当、もしくは下記よりお問い合わせください。
~早速、物流で検討されたい企業様へ~
モーダルシフト
現状のトラック輸送から鉄道輸送に輸送モードを変える(モーダルシフト)ことで、CO2排出量の削減効果があります。出荷元から指定納品先まで、トラック輸送・鉄道輸送を組合せ、お客様のご要望に合わせた最適ルートを提案します。

ご興味のあるお客様は、弊社営業担当、もしくは下記よりお問い合わせください。
トラックでも排出量削減を検討されたい企業様向け:ネットワーク便
低い積載率の貸切便で輸送している場合、混載便をご利用頂くことで、CO2排出量の削減に効果があります。
当社のネットワーク便は、重量物や精密機器の混載輸送が可能です。精密機器を混載輸送する場合、通常は木枠梱包などが必要となりますが、当社のネットワーク便をご利用頂くと、簡易梱包で混載できます。



ご興味のあるお客様は、弊社営業担当、もしくは下記よりお問い合わせください。
フォワーディングニュース(航空輸送)
欧州向け
・長期運賃は高止まり傾向が継続しています。輸出貨物の需要が低調に推移しているため、SPOT運賃は下落傾向にあります。
・9月以降はピークシーズンの到来に伴い、需給環境が逼迫することが見込まれます。
・英国におけるストライキの発生に伴い、英国向け航空貨物需要の動向には注意が必要です。
米国向け
・現行の西海岸労使協約は6月30日をもって失効しており、今後の交渉次第では市況が大きく変化する可能性があるため、継続して注意が必要です。
・北米西岸における鉄道接続の遅延の影響により、海上貨物の航空輸送へのシフト案件の問合せが8月末より増加しています。9月は四半期末の駆け込み需要も見込まれ、スペースタイトになる可能性がありますので注意が必要です。
アジア向け
・中国向けは、上海向け需要が完全に戻っていないことから、スペースは潤沢ではないものの、滞貨は発生しておりません。中国他空港向けも同様の状況にあります。ただし、連休前後は突発的にスペースが逼迫する可能性があります。
・香港向けは、スペースに比較的余裕があります。
・台湾向けは、9月もCI(チャイナエアライン)の定期フライトでの一部運休および機材変更による輸送キャパシティの減少が継続しています。香港向けCX(キャセイパシフィック航空)005便の日曜日フライトは、9月に再び台北経由での運航となっております。半導体関連需要が旺盛なため、スペースは非常に逼迫しています。
・韓国向けは、混雑傾向が継続しています。9月より各航空会社がソウル/金浦線の受託を開始しますが、旅客便であるため混雑傾向を完全に解消するには至らないものと推測されます。
・南アジア向けは、海上貨物の航空輸送へのシフト需要が落ち着き、航空貨物需要は低調に推移しています。
・9月以降はピークシーズンの到来に伴い、需要増加が見込まれますが、ウクライナ情勢によるアジア系キャリアへの貨物迂回の影響により、新興国向けマーケットレートは高止まりの状態です。
フォワーディングニュース(海上輸送:マーケット状況)
直近の動向
・現行、中長期の契約運賃については高止まりも、コンテナ船市況は短期スポット運賃の軟化傾向が続いています。
・船社契約運賃の短期スポット化が継続しており、オンラインの運賃見積・ブッキングサービスを導入する船社と航路が拡大中です。
主なポイント
・中国の複数の都市で、新型コロナの流行が再燃していますので、規制措置強化に伴う物流インフラへの影響が注視されます。
・欧州港湾で発生したストライキの影響で、ロッテルダム、ハンブルク、ブレーメルハーフェンの各港で混雑・遅延が悪化しています。
・北米西岸港湾労使の協約改定交渉は停滞しています。シアトル港における荷役ターミナルの管轄権で⾏き詰まりとなっています。
編集後記
今回も、当ニュースレターをお読み頂きありがとうございます。
今回のテーマは鉄道貨物輸送でした。
記事を作成していて、昨年、新幹線による貨物輸送のニュースを見たことを思い出しました。
宅配便が主な対象だったと記憶していますが、新幹線イコール出張か旅行というイメージでしたので、とても驚きました。現在は宅配便のほか生鮮食品や、半導体といった付加価値の高い品目にも対象を広げているそうです。
社会環境が変われば、既存サービスも新しい使われ方をしていくのだと感じました。
ニュースレターはWEBからもお読みいただけるようになりました。
ご興味ありそうな方へご紹介いただけましたら幸いです。
6月号 上海ロックダウン後の物流
7月号 気候変動に関連した情報開示動向
8月号 デジタル田園都市国家構想
8月8日号 インフラの老朽化問題