Nittsu NEC Logistics News Letter
2023年3月号
INDEX
- トピックス:EPA・FTAとは?活用メリットと利用の難しさ
- 関連物流サービスのご紹介:EPA・FTA利用をサポートする輸入通関サービス/関連事例のご紹介
- フォワーディングニュース:航空、海上
- 編集後記
トピックス:EPA・FTAとは?活用メリットと利用の難しさ
EPA・FTAの概要
EPA(経済連携協定)やFTA(自由貿易協定)は、私たちの生活にとって近年はより身近なものとなっています。TPPやRCEPの締結をニュースなどで目にされた方は多いのではないでしょうか。
外務省によると、EPA・FTAとは幅広い経済関係の強化を目指して、貿易や投資の自由化・円滑化を進める協定です。
具体的には、「FTA」は、特定の国や地域の間で、物品の関税やサービス貿易の障壁等を削減・撤廃することを目的とする協定、「EPA」は、貿易の自由化に加え、投資、人の移動、知的財産の保護や競争政策におけるルール作り、様々な分野での協力の要素等を含む、幅広い経済関係の強化を目的とする協定とされています。
出展:外務省ホームページ(https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/fta/index.html)
EPA・FTAの変遷
貿易に関連する様々な国際ルールを定めているのはWTO(世界貿易機関)です。WTOは1995年に設立され、加盟国は164か国・地域(2022年6月時点)となり多数の国が加盟していますが、各国の立場の違いがある中でWTOは「全会一致」での意思決定を重視するため、交渉が停滞することがあります。
そのような中、二国間での交渉が増えはじめ、日本においても、初めて2002年にシンガポールとEPAを締結しました。
日本と各国・地域のEPA・FTA取り組み状況
日本は2002年のシンガポールとのEPA締結を皮切りに、2008年には初めての広域EPAをアセアンと締結、その後もより幅広い分野でのルールを構築したCPTPP(環太平洋パートナーシップに関する包括的および先進的な協定)の締結などEPAの拡大を進め、24の国・地域と21の経済連携協定を発効・署名済です(2023年2月時点)。
出展:通商白書2021(https://www.meti.go.jp/report/tsuhaku2021/whitepaper_2021.html)
日本の貿易総額に占める国・地域の貿易額の割合
日本が発効・署名済のEPA・FTA等の相手国との貿易が貿易総額に占める割合(図1)は78.0%、更に交渉中EPA・FTA等の相手国との貿易も加えると貿易総額に占める割合は86.4%にものぼります。
貿易総額からみても、日本が貿易で関わる主要相手国と、EPA・FTA等を締結できていることが分かります。
図1:日本の貿易総額に占める国・地域の貿易額の割合(小数点第3位四捨五入)
出展:「我が国の経済連携協定(EPA/FTA)等の取組」(外務省)(https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/fta/index.html)を加工して作成
EPA・FTAの活用メリット/利用の難しさ
EPA・FTAの活用メリット
EPA・FTAを利用するメリットとして、まず輸出入品の関税が減税、免税等となることで企業は価格競争力の向上を期待できます。例えば、EU域内から日本へセーターを輸入する場合、通常関税の場合は関税率が約9.1~10.9%となりますが、日EU EPAが適用できる場合は0%(無税)となります。
また、日本企業が海外で事業展開を行う場合、海外進出を行いやすくするための環境整備も図られています。具体的には、投資財産の保護、海外の事業展開の中で得た利益について日本への送金を自由に行えること、現地における労働者の雇用等を企業へ要求することの制限・禁止等です。海外でのサービス業の展開についても、外資の出資制限や拠点設置要求等の禁止、パブリックコメント等による手続の透明性確保等があり、国同士で協定を締結することで、企業が海外で事業展開するために安心性を確保できるルール作りが行われています。
実際、「各経済連携協定別(EPA)の第一種特定原産地証明書の発給件数(年別)」(図2)をみると、特にRCEPの発効以降は増加傾向にあることが分かります。
図2:各経済連携協定別(EPA)の第一種特定原産地証明書の発給件数(年別)
出展:経済産業省(https://www.meti.go.jp/policy/external_economy/trade_control/boekikanri/gensanchi/coo.html)
EPA・FTA利用の難しさ
EPA・FTAの利用は企業において様々なメリットがあり、EPA・FTA利用は拡大していますが、制度を利用する難しさもあります。
JETROが実施した「2018年度日本企業の海外事業展開に関するアンケート調査」によると、日本からの輸出においてFTAを利用している企業へFTA利用上の問題点を聞いたところ、問題点として最も多く挙がったのが、「原産地規則を満たすための事務的負担」(60.6%)で、「輸出のたびに証明書発給申請が必要であり、手間」(51.4%)、「品目ごとに原産地判定基準が異なり、煩雑」(45.5%)が続きました(図3)。
※2013年度も同設問でアンケートが実施されている
図3:FTA利用上の問題点(FTAを利用している企業、時系列)
出展:「2018年度日本企業の海外事業展開に関するアンケート調査~JETRO海外ビジネス調査~」(JETRO)(https://www.jetro.go.jp/ext_images/_Reports/01/a27d83f6e1cd38e6/20180055.pdf)
EPA・FTAを適用するためには、適用を受ける輸出入品が原産品である必要があり、原産品であるかどうかは各協定で品目ごとに定められている基準に基づき判定されます。利用した場合のメリットはあるものの、メリットを享受するまでには、原産地規則の適用条件を満たすこと、また原産性を確認するための各種手続き(原産地証明書の取得や自己申告制度の書類作成等)、適切な通関手続き、そのためのEPA・FTA制度の情報を習得する難しさがあることが伺えます。
EPA・FTA制度は、制度を適用するために煩雑性はあるものの、適用できた場合のメリットは企業の競争力強化を期待できます。次項目では、当社がお客様のEPA/FTA制度利用をサポートする輸入通関サービスをご紹介します。
EPA・FTA利用をサポートする輸入通関サービスのご紹介
はじめてのEPA・FTA ー輸入通関サービスー
こんなお悩みはありませんか?
・EPA・FTA制度は、通関手続きが煩雑で難しそう
・EPA・FTAを利用して、コスト(製品単価)を下げたい
・EPA・FTAを適用して、輸入したい
EPA・FTAを利用した輸入を行う場合、お客様から上記のようなお悩みを伺います。当社では、EPA・FTA制度を利用した輸入をご検討されている企業様向けに、制度適用での関税削減の可能性の調査をはじめ、輸入に向けた各種サポート、輸入通関手続きや荷主代行業務のトータルコーディネートを行っています。
サービスご提供までの流れ

お客様のメリット
- EPA・ FTA制度を利用した煩雑な通関作業を委託することで、お客様の工数削減に繋がります。
- 減税が可能になることで製品コストが下がり、価格競争力の向上に繋がります。
- ノウハウのある専門業者に委託することで、手続き全般の正確性/時間効率の向上が図れ、お客様の販売機会の拡大に繋がります。
対象製品
・衣類全般(靴を含む)
・化学工業製品
・プラスチック製品
・雑貨品
※EPA・FTA締結国同士の貿易前提となります。
※上記の対象製品は参考となり、製品特性などのよっても見解が変わってくるため正式な対象有無は税関教示による原産地照会を以て最終判断となります。
EPA・FTA利用をサポートする提案事例
EPA・FTAの適用サポートによる節税の実現/物流スキームの改善による販売機会拡大へ貢献
「EPAを適用したいけどノウハウがない」といったお客様のお悩みに対して、当社は通関業のプロとして正確な申告をサポート。さらに、調達での物流スキーム改善とステータス見える化を提案し、従来スキームの不便を解消しました。

フォワーディングニュース(航空輸送)
米国向け
・北米西岸労使協約は6月30日をもって失効しており、今後の労使交渉次第では状況が 大きく変わる可能性があるため、引き続き注意が必要です。
・2月に続き貨物需要は軟調に推移することが見込まれますが、上記の労使交渉の動き次第では変動する可能性もあります。
欧州向け
・2022年後半以降、荷動きが低調に推移しているものの、旅客需要の回復に期待し 4月以降の夏季スケジュールにおいて日本ー欧州間の復便を表明する航空会社が見られます。
・2月中旬にドイツ国内各空港にてストライキが発生し、ドイツ発着便に運休・遅延が生じました。インフラ業就労者による賃上交渉は続くと見られ、欧州域内輸送やフライト状況に注意が必要です。
・EUの環境負荷低減策が厳格化しています。一部の国では使い捨てプラスチック輸入時の課税が開始されます。
アジア向け
・上海向けは貨物需要が軟調なため、フライトの復便は完全ではないものの、スペースには余裕があります。
・保冷品・危険品についての受託制限は緩和されつつありますが、レートは依然高騰しています。中国他空港向けも同様の状況にあります。
・香港向けは、中国華南地域に転送される貨物の需要が弱く、スペースには比較的余裕があります。
・台湾向けは、貨物需要は軟調です。スペースの確保は基本的に可能となります。
・韓国向けは、貨物需要は軟調であるものの、他の仕向地と比べて需要に底堅さが感じられます。近距離路線であることから成田、関空発ともに通関同日フライトは混雑傾向が続いています。
・南アジア向けは、南アジア全体としての貨物需要は落ち着いており、スペースには余裕があります。
フォワーディングニュース(海上輸送:マーケット状況)
直近の動向
・2022年後半からのスポット運賃軟化に追随し、一部船社・航路の契約運賃も2022年10月以降下落しています。
・現行2023年1Q(1~3月)契約運賃は下落船社・航路が拡大傾向も一段落し底打ちの様相です。
・次期2023年2Q(4~6月)契約運賃交渉を開始しています。
※ご参考 コンテナ運賃の種類
契約運賃:船会社と荷主・フォワーダー間で輸送数量等を中長期契約をおこない、定額運賃を定めたもの。
スポット運賃:需給バランスで都度変更する運賃で、運賃トレンドを確認するソースとして認知されているもの。
主なポイント
・アジア発欧米向け・アジア域内航路のコンテナ荷動きは鈍化傾向が継続中です。
・運賃軟化傾向一服感も、今後の船腹需給バランスとコンテナ市況動向に注視が必要です。
・長期化している北米西岸労使交渉は、労使共同による声明がされ、交渉内容未公表ながらも近々合意に至る見込みと発表されています。
編集後記
今回も、当ニュースレターをお読み頂きありがとうございます。
今回のテーマはEPA・FTA制度についてでした。
「経済連携協定(EPA)」や「自由貿易協定(FTA)」という名前を聞くと自身の日常生活とはあまり関わりのないことのように思えますが、普段来ている衣類は、もしかしたらEPA制度を利用して輸入されたものかもしれません。
今後も日本のEPA戦略で貿易環境の変化は起こるものと思われ、情報発信していきたいと思います。
引き続き、国内外のトピックスを掘り起こし皆様にお届け出来ればと思いますので、次回もお読みいただければ嬉しく思います。
バックナンバーはWEBからお読みいただけるようになりました。
ご興味ありそうな方へご紹介いただけましたら幸いです。
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